二月の星のうえ

テイルズが好きです。ほぼネタバレに配慮していない個人的な感想です。

【TOZX#18】ゼスティリア ザ クロス と ベルセリアの交差点。メーヴィンが語ったこと(アニメ19話感想)

2/12に放送されたテイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス #18「商談」にて、ベルセリアの内容に触れるシーンがありました。
不意打ちもいいとこでしたがとても嬉しかったです。ようやくクロスした!

ですが我々の知っているベルセリアの歴史とかなり違った解釈がなされていたため、細かく確認していきたいと思います。 

なお、ゲーム版ゼスティリア・ベルセリアのエンディングまでのネタバレが含まれているので未プレイの方はご注意ください。

エピソード18(19話)は、スレイがローランス帝国皇帝ドラン(アニメオリジナルキャラで、ゲームでは先代皇帝・故人ということになっている)と会うところからスタート。
そして初っ端からいろいろ衝撃的な設定が明かされます。

■ローランス皇家と語り部
・ドランは、穢れを見ることは出来ないが、穢れのことは知っていると発言。
・ローランス皇家は古くから、皇家にのみ伝わる伝承を守り受け継いでおり、穢れの存在を認識していた。
・穢れのことを伝えたのは「語り部」である。「メーヴィン」とは、「語り部」の一種の称号のようなもの。【ここでマギルゥとビエンフーの姿が映し出される】
・メーヴィンはいにしえから存在し、自らにかけた誓約を破ることで、ローランス皇家に世界の秘密を伝えた。 

■世界の秘密とは
・数千年前のこと。世界から穢れをなくすため、すべてのものから感情を奪おうとした者がいた。【ここでアルトリウスの姿】
・穢れは人の感情から生まれるが、人の目には映らない。
・ある日、彼の者(かのもの)によってある儀式が行われ、人から感情が失われ、世界から穢れが消失した。
・しかし、たった一人、ベルベット・クラウだけは感情を奪われなかった。【ここでベルベットの姿】
・ベルベットが抱いた彼の者への憎しみが、災厄の始まりを生んだといわれている。 

アニメではこのあとなぜかペンドラゴで死んでいるドラゴンを浄化したりしてまた謎が深まってしまった笑のですが、まずは前半パートのベルセリアに関する部分を一つずつ確認していきます。
ゼスティリア側へのなぜ?的なつっこみはとりあえず省略しています。

 

■ローランス帝国についての歴史。

Z:1000年前
(B:ゲーム本編)
災禍の顕主と導師の抗争が勃発。
大陸暦が改められ、グリンウッド暦元年となる。
後に、パーシバル王によって、導師や対魔士に関する情報が公式の記録から抹消される。
Z:600年前
(B:400年後)
【アスガード隆盛期】
アスガード王家の末流のひとつ、ドラゴニア家のペン=ドラゴニア伯が台頭し、のちにペンドラゴとなる地を攻略。ローランス帝国の始祖となる。 多くの文化や伝承が失われ、再構成された時代。
ドラゴニア家=オスカーの家のこと?

 

■ここでいう語り部はマギルゥのことなのか。
まあ普通にマギルゥとビエンフーの後ろ姿が映し出されているので彼女らのことと考えてよいかと思います。
ローランス帝国が興ったのがBの400年後なので、誓約使用の寿命でも300年が限度とするとギリギリ生きてるかどうかというところですが。

ハイランド王国や北の王国が表舞台に出てくるのはもう少し先のことなので、マギルゥが生きていた頃に一番力があったのはやはりローランス帝国みたいですね。それがローランスを選んだ理由になるんだろうか。(ローランスはオスカーのドラゴニア家と関係がありそうだけど、それも要因になるのかな……)

しかしこれがマギルゥのことだとすると、恐らく彼女が初代メーヴィンであるわけだから、ローランスと語り部は初代からの付き合いということになるのか。
ただ、「歴史に干渉しない」誓約があるせいで、後の語り部も皇家にはこれ以上関われないですね。メーヴィンおじさんとローランスもあんまり関係がなさそうだし、大昔に秘密を伝えていただけで、その後の親交は薄いのかもしれない。

 

■なぜメーヴィンは誓約を破ってまで、ローランス王家に秘密を伝えたのか。
今回の一番の謎です。
仮にマギルゥが死の間際で、とにかく誰かに語る必要があったとしても、語り部の一族へ伝えれば十分でそれが正規のルートであるはずなのに、わざわざ誓約を破ってまで語ったのはなぜなんだろう。

理由として考えられるのは、
・災禍の出現などにより、穢れを押し留めるため、皇家に世界の仕組みを伝え協力を仰ぐ必要があった。
・保険として、語り部以外にも伝えておく必要があった(語り部一族がまだ盤石でなかった)。
・表向きに伝わる歴史の内容が、彼女の知っているものとあまりにかけ離れていたので、黙っていられなかった。
とか、どれも根拠はありませんが。 

しかしながら、当然語り部一族の方にも、彼女の知る世界の歴史を伝えていたはずだから、この世界は<語り部>と<ローランス皇家>のふたつの組織が伝承を受け継ぐという構図になってしまうし、それでも歴史を記録する正統な機関は<語り部>の方なのだから、ローランスが伝承を守り続ける必要性については懐疑的である。
しかも、ベルセリア後にパーシバル王子が導師や対魔士に関する情報を公式の記録から抹消しているにも関わらず、なぜまたその歴史を表に出すようなことになったのだろうか。しかも、微妙に捻じ曲がりながら。

語り部とローランスという二つの組織にそれぞれ伝わる伝承……それは明と暗、表と裏の関係に近くなると思います。恐らく語り部に伝わる伝承の方がより真実に近いはずですから、そういう意味ではローランス皇家に伝わる伝承は、保険というよりもむしろカモフラージュ・偽装であったとさえも予想できてしまうかと思います。
うーん。
ゲームのシナリオどおり、メーヴィンおじさんがスレイたちに大地の記憶を見せるあたりでベルセリアの話もするのかなと思っていたけど、わざわざローランス皇帝に語らせたということは、ローランスとメーヴィンの間にただならぬ関係があったことが今後の伏線になるのでしょうか。
残りのアニメで回収されるかわからないけど、なんでそういう設定になったのか気になります。

 

■誓約を破ったメーヴィンはどうなったのか?
ここでの誓約は、メーヴィンおじさんの場合と同様「歴史に干渉しない」ことで寿命を伸ばすものだったと考えられる。そのため、当然、王家に秘密を語ると誓約の力が失われて死亡したはずです。

それが、寿命が限界にきてからのことだったのか、まだまだ生きられる状態だったのかはわかりませんが、切羽詰まるほど必要性のあることとは思えないし、死が間近だったと考える方が自然な気がします。

 

■ベルセリアは各種関連資料からゼスティリアの1000年前と予想されていたが、なぜ数千年前のことになっているのか。
B-Z世界では、歴史の断然と文明の発展・衰退が繰り返されていますが、それらの要因は「カノヌシの沈静化」が主なものだったのではということがベルセリアで明らかになりました。
そしてベルセリアでは聖主マオテラスが誕生し、以降は沈静化の起こらない世界になった。

しかし、それでもゼスティリアの時代までの間に、文化や技術が失われたりして歴史が途切れている時期もあり、この世界では過去の歴史があまり信用できません。カノヌシの沈静化は関係ないとされる時期にも、クローズド・ダークのように空白の時代があったりするし。

そういうわけなので、基本的に細かい時期を特定することが困難な世界であるといってよいと思います。
棲んでいるのも人間だけでなく聖隷やらがいたりして、彼らの思惑も多少なりとも作用しているでしょうし。
メーヴィンやローランス側がわざわざ嘘を語る必要性も感じない。ベルセリア後は気候・地殻変動などで相当混乱したということもあるので、正確に伝わっていないのも無理はない。

皇帝からこのあとに聞いたアリーシャ拘束の話も誤報だったし、この世界の情報はほとんどが不正確なので、とくに人づてに聞いたことは鵜呑みにしない方がいいかもしれないです。。

 

■なぜベルベットが災厄の始まりといわれているのか。伝承の内容は真実なのか。
彼の者(アルトリウスとカノヌシ両方にかかってる?)によって行われた儀式とは沈静化のことを指し、アルトリウスに関する説明もだいたい合っています。
ちなみに「彼の者(かのもの)」という呼び方は、ゼスティリアでライラが災禍の顕主のことを呼ぶのと同じものです。
なので、ベルセリアをプレイしていない人には、彼の者と呼ばれたアルトリウスの方が災禍の顕主なのではないかと思うようなミスリードにしているのかもしれません。 

さて、ベルセリアの内容と微妙に食い違うのが、ベルベットに関する部分。
・たった一人、ベルベット・クラウだけは感情を奪われなかった。
・ベルベットが抱いた彼の者への憎しみが、災厄の始まりを生んだといわれている。
実際には、鎮静化が起きたあともパーティメンバーやパーシバル王子、タバサなど、一部の人はまだ意思が残っていたし、聖主の御座から離れた場所では影響が薄かった。
なのでベルベット一人だけ、というのは脚色か、伝わっていくうちに内容が変わってしまったといったところでしょう。

また、ゼスティリアでいう「災厄の始まり」はカムランにあるし、そのさらに大元という意味では災禍の顕主や穢れのことを指すのだと思うけど、ベルベットについては「感情を消し去る儀式も凌ぐほど彼の者への憎しみを抱き、そして災厄の始まりを生んだ」という説明だけしかなく、災禍であったとも、導師を殺したともいわれず、彼女が悪なのか善なのか判断できないような感じになっていました。

スレイの性格的には「感情を消し去るのはよくない」と考えそうです。
その点では、「一人だけ感情を失わなかったベルベットが何かした」と聞いただけだったら、良いことをしたのだと思うかもしれません。でも沈静化が穢れをリセットする唯一の手段(一時でも穢れを完全に0にするという意味で)だったとしたら、彼はベルベットを非難するのだろうか。それとも。
スレイはベルベットに会ったらなんて言うんだろうな。

ベルセリア後にパーシバル王子が歴史から導師関係のことは抹消したものの、災禍の顕主一行の悪行の数々は人々の記憶にすでに鮮明に焼き付いていました。
ベルベットの伝承については、マギルゥの伝えたことと人々の間で語られていたことが混ざってしまったのか、もしくはマギルゥが面白可笑しく「あやつは本当に恐ろしい魔王じゃった……」とか盛って話した可能性もぜんぜんあるけれど。

  

しかし一番うれしかったのは、「ベルベット」という一人の女の子の名前が、1000年先の未来でも消えていなかったことです。

もうほとんど概念と化して、誰にも会わずに、話さずに、眠っているだけの彼女のことを覚えている人がいた。誰にも讃えられず、知られることのなかった一人の女の子の戦いを、マギルゥは、ずっと忘れずにいてくれたんだ、と思えました。

マギルゥがこの世界やみんなのことをどーでもよくないと思えるようになったきっかけをくれたベルベット、その彼女から受け継いだ炎がずっと心に灯っていたこと。それがようやっと未来の導師と交差したこと。その導師がまたマオテラスを救ってくれること。

スレイの口から「ベルベット・クラウ」という名前が出ただけで、本当に意味のあることだと思うし、マギルゥがたったそれだけのために誓約を破ったのだとしても、私は納得してしまうような気がしました。

マギルゥ=メーヴィンは、歴史を<看取り、記録>する者として始まったのだと思うけれど、その後に彼女が担った「刻遺の語り部」という名のとおり、彼女は<語る>という行為を、真に大切にするようになったのだと思う。
それは語るための歴史を彼女が見たからで、彼女が忘れたくないと思った出来事がたくさんあったからで。

伝えたことが事実とは少し違う内容だったとしても、それが時間の流れとともに形を変えていったとしても、伝える相手が誰であっても、とにかく彼女は世界へ向けて語ったのだ。ベルベットという一人の村娘の記憶を。

あの興味なさげに「どーでもいいわい」とか言ってた彼女が。もうそれだけで、すごく救われてしまった。
そこが一番重要な部分だと思います。わずかでも、ベルベットを人の心の中で生きさせたこと。時期とか内容とかが食い違っていても、マギルゥが語ったということが一番大事。

 

あとビエンフーが一緒にいたのが本当に本当に最高だった。マギルゥの寿命に限界がくるときにも、ビエンフーはそばにいて看取ってくれたんだろうな。そしてそのあともずっと、姐さんとの思い出をノルミンたちに語っていたらいいなと思う。

アニメの#18は、ベルセリアを最後までプレイしていない人たちには恐ろしいほどのネタバレ回だったと思うけど、誰が正義で誰が悪なのか? 誰の生き方が正しいのか? 本当はどんな物語がそこにあったのか、それはあなたの目で確かめてくださいね、というメッセージがあったのではなかろうか。

ちなみにアニメ冒頭の場面のBGMには、ゼスティリアのゲームタイトル画面で流れる「誘いの壁画」という曲が使われていました。Zのタイトル画面は、クリア後にスレイとマオテラスが向き合って眠っている壁画に変化するという仕掛けがあります。
そしてその後、ベルセリアの話にふれるときには「Theme of velvet」のアレンジが流れるという。。
ゼスティリアとベルセリアは、地続きの世界だと、改めて思うことができました。BGMの選び方にもこだわりが感じられて、本当にufoさんありがとうございますって感じです。 

 

さて、今回のアニメではもう一つ重要な話が出てきていました。

「ペンドラゴ教会神殿でドラゴンが死んでいたと思ったら浄化できてしまった」
な……何を言っているのかわからねーと思うが…… 


まず「ドラゴンが死んでいる」という状況が異常。
一応ドラゴンは最強の憑魔で、簡単に殺せるものではない。しかも教会で死んでいたドラゴンは幼体ではなく死してなお強力な穢れを放つほどの強い個体でした。

カースランドのドラゴン牧場では<不死身>のドラゴンから穢れを得て、カノヌシを制御しようとしていた。つまりドラゴンってのはそのへんでひとりで死んでいていいような生き物じゃないんだけど、一体何があったんだ……。
外的要因だとしたら、ドラゴンを殺せるほどの存在がいるっていうかなりヤバイ状況だし、これが教会の中にいるのもヤバイし、そもそもドラゴン化したのはどの天族なのかという疑問も。Zはペンドラゴでムルジムが憑魔になってたけど、まさかな……

そして教会側はなぜ教会を封鎖して、ドラゴンを隠していたのか、これも原作にはなかった謎です。 

で、何度もいっているけど、これまでドラゴンは絶対に浄化できない存在でした。
だからライフィセットはドラゴンになることを誓約としたし、ドラゴンになったアイゼンは殺すしかなかったとされている。これはB-Z世界共通の絶対法則で、覆したら破綻する、絶対に覆してはいけない設定でした。

ではなんで浄化できてしまったのかというと、ドラゴンが死んでいたからですね。あそこに滞っていた穢れはドラゴン本体が発するものではなく、ほとんど残滓に過ぎなかったのだと思われます。だからやっぱり生きているドラゴンは浄化されてはいけないものなんです、が。

ここで「ドラゴンでも死んでいれば浄化できる」という新設定が登場したのは、きっとアイゼンとの向き合い方に関わってくるのだと思います。
死んでから浄化できるなら殺さなくても浄化できるかもしれない、でもやっぱり殺すしかないのか、まだ方法を探すのか。

今回もゼスティリアザクロス面白かったです!ベルセリアのことにふれてくれて本当に嬉しかった。また新しい情報が出てくるのが楽しみです。