3年前の緋の夜に、ラフィを生贄にしてカノヌシは完全に復活しました。
しかし「完全覚醒」にはまだ至っていなかったため、ベルベットたちは離宮で偶然みつけた古文書の解読を進めます。
カノヌシのかぞえ歌
そこには、カノヌシを表す図と、かぞえ歌が描かれていました。古文書は、その意味を解読した注釈書だったのです。
かぞえ歌の一番は
八つの首もつ大地の主は 七つの口で穢れを喰って
無明に流るる地の脈伝い いつか目覚めの時を待つ
四つの聖主に裂かれても 御稜威(みいつ)に通じる人あらば
不磨の喰魔は生えかわる 緋色の月の満ちるを望み
忌み名の聖主心はひとつ 忌み名の聖主体はひとつ
という内容です。
ちなみにかぞえ歌は、一般には一から順に数詞を折り込んで歌うものですが、これは八から始まっており、鎮めの刻に向かってカウントダウンされているような不気味さがあります。
ハリア村での解読を終えた時点でのベルベット一行の推測は
・首は八つ、一体が本体で、ほかの七つは”カノヌシの口”。
・七つの口は穢れを食し、地脈経由で本体に送り、カノヌシを覚醒させる。
・そういう性質の魔物を喰魔と呼ぶ。
・御稜威(神の威光に適う者)があれば、喰魔は何度でも生まれ、カノヌシは復活する。
・喰魔とカノヌシの本体は地脈でつながっている。喰魔は地脈点に配置するのが最も効率がよい。
・喰魔の姿はそれぞれ違う。
ということでした。ほぼほぼ当たってる。
さらに解読を進めていくと、
・カノヌシの力に適合した人間・動物などが喰魔になる。
・喰魔を殺すと、別の適合者が喰魔になる。
・喰魔の数は決まっているので、殺さなければ次の喰魔は生まれない。
といったことがわかりました。
カノヌシの完全覚醒を防ぐためには、どうやら「穢れをカノヌシに送る喰魔を地脈点から引き剥がし、殺されないように守り抜く」ことが必要だ、という結論に至ります。
しかし実はこれはミスリードでした。これについては後述します。
カノヌシのかぞえ歌 二番
かぞえ歌には二番がありました。
八つの穢れ溢るる時に 嘆きの果てに彼之主は
無間の民のいきどまり いつぞの姿に還らしめん
四つの聖主の怒れる剣が 御食し(みおし)の業を切り裂いて
二つにわかれ眠れる大地 緋色の月夜は魔を照らす
忌み名の聖主心はひとつ 忌み名の聖主体はひとつ
二番ではカノヌシの性質を表していると考えられます。
ゲーム中では事件も重なりこれの解釈はぐだぐだになってしまいましたが、恐らく「八つの穢れが揃い、カノヌシが完全覚醒すると、穢れごと人の心を喰らい尽くし、無に還す役を担う」ことを意味していると思います。
四つの聖主~からはちょっとよくわからないので後で考えます。笑
しかし「無間(∞)」「魔を照らす(マオテラス)」という言葉が使われていることから、カノヌシについての情報を与えるゲーム中のヒントというよりかは、エンディングの内容を指し示したものであるような気がします。
八つの穢れの“質”
ベルベット一行は、「穢れをカノヌシに送る喰魔を地脈点から引き剥がし、殺されないように守り抜く」ことが必要だと考えて各地の地脈点をまわり喰魔を回収していきますが、実はカノヌシ覚醒に必要なのは、喰魔が喰らった穢れの”量”ではなく、八つの”質”でした。
貪婪、傲慢、愛欲、逃避、利己、執着。この六つは、ベルベットたちが喰魔を引きはがす前にすでに得ていたのです。
自分たちが優勢と思いきや、ベルベットの中にある残る二つを喰われればカノヌシは完全覚醒してしまう、という大ピンチに。
ここで、それぞれの喰魔のもつ穢れをまとめたいと思います。
喰魔 | 穢れの質 | 一般的な意味 |
ベルベット | 憎悪 | ひどくにくむこと。にくみ嫌うこと |
ベルベット※ | 絶望 | 希望がまったくなくなること |
モアナ | 貪婪 | 飽くことを知らないこと。大変に欲深であること |
メディサ | 傲慢 | 思い上がって横柄なこと。人を見下して礼を欠くこと |
テレサ(ディース) | 愛欲 | 対象に強く執着すること。特に、肉親あるいは異性に強く執着すること |
オルトロス | 執着 | ある物事に強く心がひかれること。心がとらわれて、思いきれないこと |
グリフォン | 逃避 | 困難をさけのがれること |
クワブト | 利己 | 自分の利益だけを大事にし,他人のことは考えないこと |
※アルトリウスは、当初ベルベットから絶望の穢れを生もうとしていたが、断念する。
このような人間の罪みたいなのを挙げるものには「七つの大罪」や「クリフォト(セフィロト〔生命の木〕の逆構造)」があり、これらがモデルなのかなという気もしますが、内容はあまり似ていません。貪婪とか初めて知りました。
余談ですが、マギルゥの装備品ピアスには、七つの大罪とクリフォト両方に対応する悪魔(ベルフェゴール、アスモデウス、ベルゼブブ、サタン)の名前が付けられています。偶然……ではないかも。
さて、七体の喰魔で八つの穢れを手に入れるためには、いずれかの喰魔が二種類の穢れを生まなければならず、これがなかなか難関のよう。
アルトリウスは、ラフィの死を利用してベルベットの憎悪を育て、絶望に落とすために三年もの歳月をかけています。
それがカノヌシの求める質だとすれば、一朝一夕に手に入るものではないということになる。
喰魔化したテレサを殺してしまったことで、次の喰魔が生まれてくる可能性があるものの、「絶望」は容易く生めるものではない。
だからアルトリウスとカノヌシはまだ完全な状態ではない。と、ラストダンジョン前に確認するベルベット。
しかし、古文書の解読を進めたグリモ姐さんはあることに気付きます。
・穢れの質を問うということは、それが”純粋”であるということ。
・本来、”不純”である穢れに”純粋”に反応することが喰魔に必要な条件だとすれば、そんな矛盾した性質をもった人間はめったにいない。
・しかし、似た資質をもった者がいる。――世に溢れる穢れを純粋に鎮めようとした歴代の筆頭対魔士たちが。
この予感は的中しました。
筆頭対魔士アルトリウスは、最終戦にて自身の中にあった“絶望”を解き放ち、カノヌシに喰わせたのです。
アルトリウスは、カノヌシに捧げるに足る絶望をずっと抑え込んでいた。恐らく「今から俺は俺を捨てる」と言った開門の日から。
一つ間違えば業魔化しかねない状況なのですが、なんらかの誓約の力があったと推測します。
そうして、ついに某アイゼン隊長の全身タイツ姿を彷彿とさせるカノヌシとの神依を実現……。
なお、その際に恐らくカノヌシに真名を付けていました。
『ネブ=ヒイ=エジャム』。意味は未判明です。
カノヌシとライフィセット(フィー)の関係
地脈点からモアナを連れ出した直後、ハリア村の人々は次々に業魔と化し、村は壊滅してしまいました。
人が出す穢れを食べていたが、地脈点から喰魔を連れ出したことで、吸収されなくなった穢れが溢れたためです。
この理屈から考えると、喰魔も、カノヌシの鎮静化まではいかないが、世界の穢れを鎮める役割の一端を担っていたということになります。
「忌み名の聖主体はひとつ」のとおり、喰魔はカノヌシの一部です。
ここで、思い出したいのが、ライフィセットに穢れを浄化する力「白銀の炎」が現れたということです。
これは喰らった穢れを消化するカノヌシの力の一部だと考えられていますが、ライフィセットは喰魔ではなく一人目の生贄の転生体です。
つまり、セリカの子どもの転生体であると同時に、カノヌシと同化した魂の転生体、もっと言えばフィーは聖主カノヌシの一部の転生体ということになるのだと思います。
ただ、業魔になったものはもう人間には戻れないというのがこの世界の理なので、「浄化の炎」は、世界の道理をも覆しかねない力。
カノヌシの一部である喰魔でも、一度業魔化するほど膨れ上がった穢れは発生源を断たなければ喰いはがせない=対象を殺さなければならないのです。
それをフィーが使えてカノヌシが使えない(使ってないだけかも)ということは、カノヌシ本体の力が欠落している証拠です。
カノヌシは「君も僕の一部だ。一緒に喰べてあげるよ」と言いますが、八つの穢れと併せてフィーも喰らったときに正真正銘の「完全体」となるようです。
カノヌシは世界に備わったシステム
聖主カノヌシは、穢れごと人の心を喰らい尽くし、無に還す役を担う。
人の欲や業を鎮め、意思を奪い、穢れを生む強い感情そのものを一時的に断つのです。
しかし、そのせいで文明は滅び去る。人間の文明が何度も栄えては滅んだのはこのためで、穢れの拡大とカノヌシによる精神浄化は太古から幾度も繰り返されてきたといいます。
リセットを繰り返すままでは、人間に進化はない。それを超えるために、聖寮がカノヌシ制御のためにつくった術が神依でした。
ですが、カノヌシが業を鎮めて人が穢れを生まなくなると、カノヌシの食べるものがなくなり、また眠りにつくことになります。
そこで、ドラゴン牧場の出番です。
不死身のドラゴンが発する強力な穢れをずっと喰わせ続ければ、カノヌシのエネルギーが無限に得られて、人間を制御し続けることが可能になります。
なお、あらすじ20のタイトルが「調律の代価」、28のタイトルが「穢れに満ちた世界の調律」となっていますが、調律という言葉がベルセリアで使われているのは1300年前の時代を指す「アヴァロストの調律」だけだと思います。
状況から察するに、カノヌシの鎮静化のことを調律と呼んでいるのかもしれません。
ゲーム冒頭で、暗い牢獄の底にいるベルベットが「絶望に凍り付いたあたしの心が感じるのは、血まみれの肉の味と、あの男への憎悪だけだ」と呟きます。
2周目をプレイすると、「憎悪」と「絶望」がすでにベルベットの中で育てられていることに気付きます。すばらしいドラマティック・アイロニーです。
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