二月の星のうえ

テイルズが好きです。ほぼネタバレに配慮していない個人的な感想です。

【ベルセリア】コミカライズ版感想(3巻)ロクロウとエレノアのこれからは

テイルズオブベルセリア 公式コミカライズ(全3巻)が完結されました。
連載おつかれさまでした!

以下、おもに3巻の話と、全体的な内容についての感想です。

全体的な感想

・尺がないので仕方ないのですが、よく言えばテンポがいいけどかなり駆け足な展開。ベルセリアやった人は脳内補完して読めるけど、初めて読む人には理解するのが難しいかもしれない。でも大事なところは飛ばさずに描いているので、シナリオをざっと知りたい人にはちょうどいいと思います。
・1,2巻はとくにフィーの心の動きが漏らさず描かれていた印象。表情豊かなので、ゲームと同じところもそれ以外でも感動できました。余談ですが、ゲームの立ち絵よりもコミック版の方がフィーの髪の長さが好みです。
・ロクロウが身を屈めてフィーに話しかけている描写があったりして、こういう細かい動きはまだまだゲームでの表現は難しいし、漫画ならではでいいなあと思いました。

 

3巻について

あいかわらずベルセリア警察的なこまかいツッコミになってしまうのは愛ゆえなので許してください。

■パーシバル王子
王子と喰魔グリフォンが正体を明かすシーンを同時にしていたのはカッコいい構成だと思いました。(原作は先に王子、少し間があいてから喰魔。)
ただ「ここに連れてきてくれた礼を言おう…”業魔”と”聖寮”の一同――…」というオリジナルの台詞は「ん?」って感じだった。業魔はわかるけどあとは聖隷と人間だし、エレノアが「聖寮」としてここにいるわけじゃなさそうなのは原作で察してたのに。
マギルゥのことも聖寮のひとりだと思ってたのか…???

あとベルベットの台詞が「世界より一羽の鷹か」→「より一羽の鷹か」に変更されています。
原作では、「喰魔を地脈点から移動させると穢れが溢れてしまうのは理解している、それでも友としてグリフォンを犠牲にしたくなかった」という流れだったけど、コミックス版は「グリフォンを犠牲にしたくないので王子としてのすべてを捨てて逃げてきた」という流れ。(ちなみに漫画版ではこの「喰魔を地脈点から移動させると、喰魔が吸収するはずの穢れが溢れて周囲の人が業魔化する恐れがある」設定は省略してる。)
なので原作の王子の方が、やってることの規模がより「自分勝手」なんだよな。ん~だから漫画版は「世界」→「国」にしたのかな。
でもベルベットが共感したのは「世界(規模は問わず)よりも大事な誰かのために行動した」という点で変わりはないはずなので、「世界」のままでもよかった気がしたなあ。


■エレノアの傷

エレノアが、自分の顔が怖いと泣くモアナに自身の傷を見せるシーン。原作は船の一室でこっそり見せてたけど、漫画ではみんながいる前で突然脱いだのでびっくりしたw


■クロガネとロクロウ

クロガネが仲間になる経緯がほぼ省略されてましたが、単純明快でロクロウらしくていい改変だと思いました。
原作では「ロクロウがシグレに負ける→クロガネに刀打ち直してもらったのをきっかけに一緒に来る」のところ、漫画では「渓谷で出会ったロクロウとクロガネが戦闘→日が暮れるまで斬り合う→意気投合して飲み交わす→『おーいアイゼン、この業魔一緒に乗せてもいいか?』」とげらげら笑っててめっちゃ楽しそうでよかった。
原作の「アイゼン、船にこの鎧を乗せる場所はあるか?」「なければだれかに着せろ」もめちゃくちゃ好きです。


■人は苦痛に…

アバル村で幻術を見せられているシーン。
マギルゥの台詞が「人は苦痛には逆らえるが幸福には逆らえん」になっていました。
正しくは「苦痛には耐えられるが~」だし、苦痛に逆らうのは普通だし、そのミスに誰も気付かないまま本になっちゃったのが悲しかったです。
マギルゥもベルベットも自分の大事なもののために苦痛から逃げずに耐えてきた、だからこそ、ここは間違わないで欲しかったよ


■フィーというなまえ

ライフィセットに「フィー」という愛称を与えるシーンが、アバルでの幻術のイベントに組み込まれていました。
原作では釣りイベント中に間違えて「ラフィ」と呼んでしまったことを発端に、弟と重ねて見られていることにフィーが拗ねて自分は自分として認めて欲しいという想いを強くする。ベルベットはその気持ちに気付き、「あんたはあんた」という想いを込めてフィーという愛称を与える、というもの。

今まで散々書いてきた(※)けどベルセリアでの『名前』はものすごく重要なもので、生まれ変わることと同義なんだと思う。だから弟と重ねられることへのフィーの葛藤、つまり弟の代わりとしてじゃない、自分を自分として認めて欲しい自我の芽生えとかすっとばしてベルベットがにっこり笑って愛称をつけて、フィーはぼっと顔を赤くする…みたいなラブコメぽい描写になってたのが少し残念でした。
先生にとって、地脈でフィーが叫んだ「ベルベットは僕に名前をくれた!」とは、最初に「ライフィセット」と名付けたときのことなのだと整理されているのかなと思いました。
コンパクトにまとめないといけないのでそっちに重きを置くのもありかとは思いますが、個人的には、本当の意味で自分は自分だと認識できた「フィー」の名前をもらったときのことも含めてだと思っています。

※参考
 今作における“名前”の考察。アーサー/アルトリウスの二面性について
 僕と君の名前。ライフィセットとマオテラスについて
 公式設定資料集オリジナル小説について/その1


■ニコと青年

幻術の解けたタリエシンにて。原作ではベルベットの親友ニコと両想いだったらしき獣医の青年が「あの娘は三年も前に死んでしまった。いくら後悔しても、もう取り戻せない……」と項垂れまだ振り切れていない様子だった。
漫画版では、

町民「あら先生そんな花束持ってどこへ?」
青年「正式に籍を入れることになりまして昔の恋人に報告に行こうと――……ニコという赤髪のとても綺麗な子でした――…」

という言葉を背に聞いて立ち去るベルベットが描かれていました。ここは本当にいいなあと思った場面。青年は前を向き、彼の時間は進み出している。でもベルベットは……という対比があるし、さっきまで笑っていたニコは幻術で、実は三年も前に死んでいた現実の虚しさとか、いろいろ詰まった一コマになっていてとてもよかった。


■気になった点

その後ベルベットについて「タリエシン以来元気がない」という台詞があったけど、タリエシンじゃなくてアバルじゃないかな~と思った。あと、

ベンウィック「ゼクリン港から緊急連絡…!!」

ゼクソン港だぞ、港の名前間違える海賊はいかんぞ。


■地脈

原作では「あたしを選んでくれなかったことが…悔しいっ…!!!」でフィーの手をとっただけでしたが、漫画版ではフィーに抱きついています。泣く。ほんとこのシーンは、どの台詞もこれ以上ないくらい最高で、何回見ても鳥肌たってしまうし本当に大好きだと再認識。


■シルバとザビーダ

シルバとザビーダがかわいかったです。

「どうだ? かわいくて思わずあのジジイからさらってやったぜ♪」

お前がかわいいわ。


■マギルゥ

ザ・カリスでのマギルゥとメルキオルの対決シーン。

「あやつは儂が絶望し膝をついたところで牙をむき
儂がしゃがみこんだ場所でまだ立っておる
その結末がどーにも気になってのう…」

わかりやすくてリリカルで綺麗なオリジナル台詞です。好き。

漫画版マギルゥは原作以上に自分とベルベットを重ね合わせている印象を受けました。
原作でももちろんそういうところはあったけど、自分やメルキオルとは違い、「悩み、苦しみ、それでも己が鼓動を抱きしめてこの醜い世界を懸命に”生きて”いる」仲間たちの結末を「見届けたい」という、また別の視点の気持ちもあったよね。まあメーヴィンとかに触れずにストーリー進行させるために、よりわかりやすいのは前者の方だったということでしょうかね。

あとメルキオルが「他人に執着のないお前がなぜ業魔に味方する?」と言っていたけど、わざわざ傍点ふってるのはなんでだったんだろう?別に今のマギルゥはベルベットたちに執着はしてない…してるのか?いやしてないと思う…執着じゃなくて「見届けたい」だけ…うーんこれは執着なのか?と自問自答してしまった。


■ロクロウとエレノア

最後のシグレとの闘いの前、メイルシオで、ロクロウとエレノアが「下に戻ったら夜桜あんみつを一緒に食おうぜ」と話していて、おおお!と思いました。
これが二人にとっての最終決戦前夜という位置づけなのでしょうか、とてもいいですね!!!???(でも「下に戻ったら」てどこのこと言ってんだろう、全部終わったら?この闘いを終えて山を降りたら?メイルシオの街の方に降りたら??)

そしてエンディング後。
原作ロクロウは山中で業魔斬ってる/エレノアは街の復興に勤しんでる描写があり、それぞれの道は交わることはない印象を受けます。
しかし、コミックスでは、対魔士として警備中?のエレノアが業魔を退けようとしているシーンで、颯爽と業魔を斬り伏せて現れた人物がいた――それがロクロウでした。
あ、ああ、うわーーエンディング後ロクロウがエレノアに会いに行ってる…って理解した……いいよね?
全部終わったら夜桜あんみつを食いに連れていってやると言っていた……その約束をちゃんと守るつもりで来たのか……ロクロウほんとお前ってやつは何から何までかっこいいやつだよ……ファンの方はこのへん必見です……!


■フィーとベルベット

アルトリウスと決着をつけたあとのシーンでの、フィーの台詞です。

原作:「僕は、ベルベットが好きだから!!」
漫画:「僕はベルベットのことが大好きだから…!!!」

このように変更されてたのがほんとに、ああ……(泣)って感じだった。
この一言の改変に、先生の想いが詰まってるなあって勝手ながら思いました。


短い期間ながら、ベルセリアを濃厚にかつ綺麗に描きだしてくださって本当にありがとうございます。先生はツイッターでもたくさんベルセリアのイラスト描いてくださってるし、あと完結とベルセリア発売2周年記念にエンディングの続きの漫画を用意してくださってるらしいのでぜひみんな見に行こう~~これはぜったい二人で夜桜あんみつ食べてるでしょ!!??(名推理)

 

テイルズ オブ ベルセリア (3) (REXコミックス)

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