二月の星のうえ

テイルズが好きです。ほぼネタバレに配慮していない個人的な感想です。

【TOtR】レイズ3部7章考察。会いたかったです、イオン様

テイルズオブザレイズ 3部第7章『鮮血と聖焔』が配信されましたので感想です。体調がとても悪くて2章分感想書けてなかったのですが、落ち着いてきたのと、今回ほぼテイルズオブジアビスの話だったので頑張って感想書きます。

まずタイトルが素晴らしくて。今まで「聖なる焔」の対としてのアッシュって「燃えカス」や「灰」という表現が主だったと思うから「鮮血」で表されるのはかなり珍しい気がします。レイズではオリジナルとレプリカっていう対比じゃなくて、彼らはひとりの人間同士になれたんだなあって思わせられる表現でした。
そして原作オマージュなシーンも多くて嬉しかったです。チーグルの森でルークとイオンが初めて出会ったシーンとか、雨の降る中「イオンを返せー!」ってアッシュと初めて正面から向き合ったシーンとか。

で、とりあえず今すぐルークの音素乖離が始まるわけではなさそうなので安心しました。でもローレライが具現化されたことで世界の環境がオールドラントに近付いたのは確かなので、何が起こるのやら。ジェイドは「アッシュはアッシュで自分が消えると思い込んでいるようですから」と言いつつ大爆発の理論については詳しく話すつもりがない感じなので、やっぱりアッシュは「自分は音素乖離で消える、以上」と思い込んでるままじゃんね? でもまあ「あなたは音素乖離で一度死んでもルークの音素とまざったあとであなただけは蘇生されるから大丈夫ですよ」なんて皆の前で言えるわけないし確証もまったくないからなあ。なによりジェイドはその理論・ルークの運命が間違いであって欲しい、彼らに覆して欲しいと思っているので今後も話すことはないだろうなあ。

異世界と結び付けて統治することについて

帝国は各大陸に異世界由来の名前をつけて領土化し、領主を派遣してそこを支配しています。しかも領主やその付き人には、大陸と同じ世界から具現化した人物をわざわざ充てている。リーガルとリヒター、ウッドロウとアトワイトなど。リチャードとマリクも恐らくそうです。

今回グラスティンが「俺も無駄なことだと思っているがデミトリアスはティル・ナ・ノーグを正しく治めたいのさ。どうせ最後には捨てるのに」と言っているとおり、デミトリアスがわざわざそんなことをしている目的がいまいちわからないんですよね。
デミトリアスは「必ずしも同じ世界の人間を……と決まっているわけではないが」と言っているけど、でもただの趣味でそんな面倒なことやるわけないし、わざわざ鏡映点を使って、領主や付き人として調整されたリビングドールβ(もとの人格とまったく無関係)にしたうえで派遣するのは、確実にその役割をこなす必要があるからだと思います。

つまり「鏡映点をその場所に配置する」必要があるのだと思う。この世界に打ち込む「楔」みたいな。わからんけど。異世界由来の体を世界にあまねく配置することによって、この世界の破壊なり上書きなりが容易になるのでは? とか思いました。

最高位の鏡士について

フィリップ「ば、馬鹿にするなよ。僕だってビクエとして王宮の狐や狸相手に渡り合ってきたんだ。はっきり言わなきゃいけない時には、僕だって……」

そうなの!?いや、そうだったらいいなと1部の頃は思ってたけどだんだんフィルのポンコツ具合が明らかになるにつれてそういうの考えなくなったな…とか思い出した。
この世界では鏡士はものすごく重宝されているし、フィルの鏡士としての能力は確かだけど、それだけで最高位にあぐらかいていられるわけじゃないよなあ。オーデンセ襲撃されて鏡士の数自体減っていただろうし、ちゃんとしていなきゃバッシング浴びるよな。
たぶん(あまり評判のよくない)ゲフィオンと一緒に登りつめていったんだろうから、彼らのことセットで妬んだり陥れようとする人もいただろうな~それと渡り合えなきゃトップになんてなれないよな~すごいじゃんフィリップ、と思ったけど、今の彼には正直そんな要素はぜんぜんないので、もしかしたらこの人若いイクミリに会ってからこんな性格になったりした? 精神が幼児退行してるんじゃ……(適当)

フォミクリー技術について

レプリカ作成に成功したグラスティンは、「無限にフィリップの代用品を増やせるようになるぞ!」「練習が捗るよ」「限りなくフィリップに近い玩具」などとテンション高く口にしますが、なんか考えうる中でもっとも低俗な使い方する人に技術が渡ってしまったな……って思った。
アビスでフォミクリー使ってた人たちって実はめちゃくちゃ高尚だったのでは。ヴァンもディストもそれは悲願のための手段であったし、オリジナルイオンはまあレプリカをほんとにガラクタとか代用品くらいにしか思ってないけど特殊な状況にいた人だし……
ということではやくジュニアくん逃げて~~~~!!

ただまあ上記のグラおじの使い方は完全に個人の趣味のためのものですが、本当はデミトリアスの望みである「ニーベルングへの回帰」のために、「分史概念」「レプリカ」「前世」「ソーディアン」の四つを組み合わせとてつもない使い方をするつもりみたいなので、どうなるのか気になります。

フィリップ、その前にあるふたつの道

ジュニア「待ってて、メルクリア。僕が今できるのは……目を覚まそうとしている君の味方を増やすこと。例え大人の僕やミリーナに……軽蔑されたとしても!」

いやすごい。「例え自分でもミリーナを裏切るなら僕の敵だ」と断言していたフィリップから具現化された、その同一存在であるはずのジュニアが「例えミリーナに軽蔑されても僕のできることをする」って言ったのものすごい成長というか変化だよ。
具現化体は、運命の分岐点から別の道を歩む自分の可能性・リアライザーだ、とかつてフィリップが言っていましたが、ジュニアがまさしくそれを象徴する存在になっている。

それにしてもフィリップ・レストンにとってもっとも至上の存在である「ミリーナ」より優先すべきものが出来てしまうなんて、一人目のフィリップがこれ見たら結構絶望するんじゃない? ミリーナを一番に想うことに自分の人生すべてを賭けてきた彼が、「ミリーナを一番にしない僕の可能性」があることなんて知りたくなかっただろうから。そんな生き方は出来ないと思っていたからこそ自分を奴隷にしてああいうふうにしか生きてこられなかったんだから。
とはいえ、「イクスのために世界を滅ぼしたゲフィオンを間違いだとは思わないミリーナ」と同じように、ミリーナにすべてを捧げてきた自分の生き方が間違っていたとはフィルは思わないだろうけどね。

それでもいつかは「そんな僕の人生もあったんだろうね」と穏やかに肯定して受け入れてくれたらいいなと思います。

ちなみにジュニアがミリーナたちに軽蔑されてまでやろうとしているのは、「一人目のイクスの遺体を利用すること」だろうなと思います。
2部終章で、イクスの遺体にキメラ結合していたウォーデンのアニムス粒子がその体から分離して死の砂嵐に還ったあと、イクスの遺体がどうなったのか明記されておらず、消えたとも、誰かが持ち帰ったとも言われていませんでしたが、やっぱりメルクリア側(というかデミトリアスやグラスティン側か?)が回収してたみたいですね。
ナーザの人格になっていたウォーデンは今は死の砂嵐を漂っているので、それを戻すことは不可能。そのため、ジュニアは一人目のイクスの遺体にまた別の心核をいれて動かすつもりなのかな、と思います。
またリビングドールをつくること、イクスの遺体を利用すること、どちらもジュニアや彼の大事な人たちの意思に反することなのですが、今のジュニアにはそれより大事なことがある、ということ。

ジュニアが変わったのは、未熟で愚かだったメルクリアが変わっていくのを近くで見ていたからこそなんだろうな、と思います。今はもう彼にとってメルクリアは、「一緒に成長していける大事な人」になっているんだろうな。そんな生き方もあったんだな、ってほんとに考えさせられる。
メルクリアの反撃も楽しみにしています。アニメ見てからメルクリアちゃんかわいくてほんとに応援してる……がんばれ……!

 

イオンとアニス

原作のアニスは、両親を人質にとられてモースの命令に逆らえなくなっており、ついにはイオンに惑星預言を詠ませるのを止められず、彼を死なせてしまいます。
その直後は「私が死ねばよかった……私が死んじゃえばよかったんだ……」という独白もあったりするけど、幼いのに大人な彼女は周囲には全然そんな面を見せず、パパとママのせいだ、と責任転嫁もせず、「私がやった」と宣言して自分ひとりを追い込んでいました。

レイズに来ても、バレンタインイベントでのアニスは「私がしてきたことを忘れないように戒める風景が何もない」「自分のしてきたことは消えないのにここにはその痕跡が何もなくて。楽になれるはずなのに逆に苦しい」と言い、ルークには「この世界ではいろいろ吹っ切っていい」と言いつつも、自分はイオンのことを吹っ切るつもりはぜんぜんありませんでした。むしろ絶対に自分のしたことを忘れないって強く思ってるような感じ。

今回も「私は……酷いことをした。それはずっと消えない。それでいいんだよ。この気持ちと責任は、私が背負わなきゃいけないんだ」とアニスは言います。
彼女のいいところは「苦しくて心が壊れそうでも、誰のせいにもせず、自分のしたことだと正面から向き合い認める」ところだと思ってます。そんな彼女は、イオンを殺してしまったことを忘れてこの世界で呑気に生きる自分がどうしても許せなくて、元の世界以上に追い込んでいたように思います。ジェイドやルークも、彼女はそうするってわかっているからいろいろと気をまわしたりしているけど、それもありがたく受け止めて、でも私は絶対目を背けない、っていう、そういう女だったと思いますアニスは。

だから、もしもう一度、死んだはずのイオン様にこの世界で会えてしまったら、自分は自分のしたことを忘れるんじゃないか、って思って、アニスはきっとそれが怖かったんだろうなと思います。普通、死んじゃったけど大好きだった人に会えるかもと思ったら、単純にすごい嬉しくてわくわくするんじゃないかな、と思うけど、アニスは自分にはそんな資格はないと思ってたんだろうな。アニスは「イオンを殺したのは自分」だって他に余計な事情を差し挟む余地がないくらい強く思ってるからね。

だけど、イオン様にもう一度会えたとき、前と同じように自分を頼ってくれたとき、そのやさしい懐かしい声を聞いたとき、なんかそういうの全部いいや、ってなったと思う。だって好きな人に会えたんだよ、もう二度と会えないと思ってた人に。そんなときにごちゃごちゃ考えてられないよ。

「イオン様にまた会えて……会えると思ってなくて……嬉しくて……。イオン様……会いたかった……!」って素直に言ったアニスに、なんかもう、いいんだよ、そうだよよかったんだよ、喜んでいいんだよ、会えてよかったね、ってほんと心から私も思うことができて、またレイズにひとつ救われたように思いました。許されなくても、許されても、自分で自分を許せなくても、もう一度その人を護れる時間が与えられたことにいまは感謝していいんじゃないかな。
こんな世界があるんだなって。彼女の願いを叶えてくれてありがとう。

6,7,8番目のイオン

今回いちばんすごかったのはアビスのパーティメンバーとイオン様と六神将が4人も揃っただけでなく、「8番目のイオンのレプリカ」という完全な新キャラが登場したことだと思います。
オリジナルイオンが具現化されていることももう相当やべえと思っていましたがここに来て新キャラを出したことにまた驚きました驚嘆に値するマジで……
8番目のイオンは生まれたばかりなので人格らしい人格はまだないのかもしれませんが、心を戻したときにどんなふうに喋りだすのか、今からとても楽しみです。それに向き合うシンクのことも。

ところで、アビスのパーティメンバーはエルドラント突入直前の時期から具現化されているようなのですが、イオンやアリエッタはそれより過去から具現化されているのでどのあたりの時期なのか少し詳しく考えます。

シンクは「やっと死ねたと思ったのに、また生きることを押し付けられて」と言っていたので地核震動停止作戦よりはあと。まあたぶんみんなと同じかな?
ディストも「アニスがイオンを殺した」ことを知っていて煽っていたので、同じかと。
イオンは「いつか、あなた(シンク)ともちゃんと話をさせて下さい。……あなたがこの世界にいると聞いて、僕は――」と言っているので、恐らく地核震動停止作戦でシンクが地核に落ちていったのを見たあと。かつ「イオン様。危険ですから、私の側を離れないで下さいね」「はい!……何だか懐かしいです。こういうの」というアニスとの会話があるので、ヴァンを一度倒して外殻大地を降下させたあとからレプリカ編開始まで1ヶ月くらい何事もなく平和だった時期があったけどそのあたりかな? と思いました。
アリエッタは、アニスとの決闘前のまだ生きているときから具現化されているのは確実ですが、もとの世界でイオンが死んだことを知らないようだったので、イオンと同じくらいの時期からの具現化かな?

記憶を経由した具現化ではなく、もとの世界のそれぞれの時間から具現化しているようなので、時系列順で見ると、こんな感じでしょうか。

原作過去

●→被験者イオンを具現化

被験者イオン死亡


地核振動停止作戦

●→ルークたちと一緒に旅したイオン、アリエッタを具現化

イオン死亡

アリエッタ死亡

●→パーティメンバー、アッシュ、シンク、ディストを具現化

エルドラント突入

アッシュ死亡

全員生きて揃ってて、誰も消えることがなくてたぶん幸せなんだろうけどさ、こういう世界があってよかったと思うけどさ、その分原作の悲惨さというか切なさがより感じられるよね。アビスの物語ってほんとつらいんだよな……まあそこが好きなんだけど……

今回、アリエッタがおれたちのイオン様のことをニセモノと言っていたのがけっこうつらかったんですけど、確かに彼女にとってはそうなんだよな。というかオリイオがそう言ってるならそれが全部彼女の真実になるんだけど。
でもアニスにとってのイオン様はあのイオン様で、偽物なんかじゃなくて。「あなたは偽物じゃない」って言ってくれる人がいるあたたかさがすごく滲みました。
シンクもイオンレプリカなんだけど、アリエッタはそのこと聞いていないみたいなので直接シンクを指してニセモノとは言いませんでした。でもシンクはニセモノ連呼されているのを横で聞いていて、ボクもそうだけどね、とか思っていただろうけど、実はそれほどダメージ受けていなかったのでは? と思います。この頃のレイズのシンクは、あの伝説のカジノイベントを経験した後なので、たとえあの場に「シンクは偽物じゃない!」と遮る人がいなかったとしても、ボクは誰にも望まれていないんだと彼が強烈な劣等感を覚えることはなかったと思います。彼の心の中には(彼自身認めていなくても)すでに友達という支えが出来ていたはずなので。

テイルズオブジアビス新章の配信ありがとうございました。面白かったです次回も期待しています!!!

 

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