二月の星のうえ

テイルズが好きです。ほぼネタバレに配慮していない個人的な感想です。

【TOtR】レイズ2部11章考察。ゆるやかな死と幻想へ

テイルズオブザレイズ ミラージュプリズン11章『迷いなき眼光へ命の叫びを宿す者』が配信されましたので感想です。
予告の段階から、ファントムに何かある回なんだろうなーと思ったけど、ミリーナ陣営側が彼を器として使うつもりだったのには驚きました。まあそれよりもっと驚いたのはラストで登場したヴィクトルパパなんですけど……ほんとあれは変な声出たよね。

ここ最近ずっと1回読んだだけでは理解するのが難しい話ばかりだった気がするけど、今回の11章はかなりわかりやすくてこれまでの答え合わせも出来てすっきりしました。

まず、予想通りバルバトスはリビングドールでした。

 こちらもほぼ予想通りファントムは生存しており、仮想鏡界を創り出している鏡士はファントム+ジュニアでした。

ローゲとバルド

彼らは生前ともにビフレスト人でウォーデンの家臣でした。しかし原因は不明ですがローゲは個人的にバルドを恨んでおり、リビングドールとして蘇った今もなお彼を陥れようと画策している。でもウォーデンからは才能を評価されているので、根は悪いやつではないっぽいが……(見た目がバルバトスだからヤバイ奴感がすごいするけど)

ちなみにローゲは北欧神話の「ロキ」のドイツ語名。バルドも、北欧神話の「バルドル」由来かなと思う。神話上でも、ロキはバルドルのことが気に入らないために奸計によって殺してしまい、バルドルの蘇りの機会すらも邪魔したりしています。(その後の混乱の末に終末の日「ログナロク」が訪れる。)
また、バルドルは北欧神話の主神オーディン(ウォーデン)の息子です。

さて、最近のバルドの作戦が尽く邪魔されていたのは、このローゲに鏡士の情報を渡している者がいるからだということがウォーデンの口から明かされました。
ミリーナたちの間では自陣の情報漏洩が問題になっていたけど、漏洩先はローゲのみであり、帝国側に組織的に漏洩させられているわけではないらしい?
鏡精のリンク機能のせいで情報が漏れているのかと思っていたけど、鏡士とローゲのつながりはちょっと考えにくいし、じゃあ誰がローゲというかバルバトスと通じてるんだって話だけど、それも思い当たるところがない。
この件はいったん振り出しに戻ったような感じがしました。うーむ。 

ナーザと予言

今回、「もはや死者である我々が何をしてもすべては理から外れた行為。ダーナの意思に背くに違いない」とナーザが言っていました。彼はどちらかというと予言から外れることを恐れ、予言は守られねばならない、と考えているような様子。
前にも書いたけど、「鏡殻変動が起きること」まではもともと予言されていました。
死の砂嵐を食い止めるためイクスが力を暴走させ魔鏡結晶が世界全体に広がったのが「鏡殻変動」ですが、それが予言されているということは、誰かが鏡殻変動を引き起こすことは確定だったわけで、そこに至るまでには「兵器としてカレイドスコープが開発され乱用される」「死の砂嵐が発生する」「誰かがそれを封じ魔鏡結晶が世界に広がる」という過程があるんだけど、「異世界具現化」はおそらくこの予言には含まれていないのではないかと思う。
ダーナの巫女ヨーランドとともに目覚めるはずの精霊たちが、異世界具現化の影響で、予言と異なり先に目覚めているためです。異世界具現化のせいで、世界は予言からはずれかけている。
ナーザは、自分たちリビングドールの存在もまた予言から外れていると考えているみたいだけど、やっぱり「異世界具現化」が転換点だろうな。異世界の理論や技術がなきゃリビングドールも実現しなかっただろうし。

皇女メルクリアと時系列の話

メルクリアは、幼い頃に滅ぼされ覚えてすらいない自分の国をこの目で見たいと望みました。そのきっかけが、「あの憎きゲフィオンが、魔鏡術で大陸を生み出したと聞いた時に決意しました」ということ。

ゲフィオンが魔鏡術で大陸を生み出した、のが、「魔鏡戦争後に死の砂嵐が発生しセールンド周辺しか残っていなかった世界に、1年前のティル・ナ・ノーグ全体を具現化した」時のことを指しているなら、この出来事は1部のゲフィオンの台詞「過去から蘇らせた新生ティル・ナ・ノーグに十年前――今現在からは二十年前の時代からイクスやオーデンセの人々を蘇らせたのだ」によると今から10年前のことになります。つまりメルクリアが2~3歳の頃になってしまう。

※上記とめちゃくちゃ矛盾する2部のジェイドの台詞「終戦後、死の砂嵐が発生してから二人目のイクスとミリーナを具現化するまで十年ほどの時間を費やしたそうですね」があるため、過去のティル・ナ・ノーグと二人目のイクス・ミリーナの具現化時期ははっきりしていない。15年前にビフレストに襲撃されイクスが死んでからミリーナの復讐が始まるので、魔鏡戦争は今から15~10年前の間に終戦しており、そこから10年後に2人目のイクミリ具現化してるとすると、1部ゲフィオンの台詞と矛盾するし。わからん。

もしくは、「ゲフィオンが魔鏡術で大陸を生み出した」は、1部での異世界具現化作業のことを指していると考えてもいいかも。それならここ1年くらいの間のことだし、異世界の知識を利用することを考えるなら時期的には合ってるし。

また、メルクリアは「今はカレイドスコープで砂になった者しかリビングドール化できませぬ。ですが、いずれはゲフィオンのように、過去からビフレストの民を蘇らせて見せますゆえ!」と言っていたけど、確かに帝国側はまだ「過去を具現化する」ことを実現できてないんだよね。
オーデンセ跡に具現化した島は過去のアスガルド帝国帝都の再現ではあったけど、それは「ファントムが開発した、自分の理想を投影して具現化するカレイドスコープ」を使ったもので、過去ではなく想像の街でした。
1部の回想で、フィリップが「イクスの形見の魔境に古のビクエの魔鏡を重ねても、一年前が限界だ」と言い、ゲフィオンも「異世界の力を借りることでこの世界を残すためには、どうしてもイクスの力ともう一枚のイクスの魔鏡が必要だった」と言っており、過去や異世界の具現化には、イクス魔鏡が必要不可欠らしい。
メルクリアが未熟だからとかそれ以前に、帝国側はもしかしたらイクス魔鏡がないせいで過去の具現化が出来ていないのかな~と思いました。
一人目のイクスの魔鏡はセールンドのカレイドスコープに使われて(今は壊れてる?)、二人目の魔鏡は海に沈んでいる?三人目の魔鏡は、魔鏡結晶の中だし。
(なお、イクスの魔鏡は彼の両親の形見のものです……) 

ダーナの巫女、ヨーランド・ビクエ・オーデンセ

久しぶりのヨーランド様のご登場。ファントムの仮想鏡界内の安置室に、ファントム、ルキウス、リーガルらとともに眠っていました。いや~~まさかの、すでに帝国側に確保されていました。
最重要人物たちを収容してる場所ってことなんだと思うけど、ここにリーガルがいるのが少し謎でした。
4章で、リーガル、ローエン、ジョニーは同じ牢に入れられていたらしいことがわかります。なお、ジョニーはすでに別の場所に移され、スパーダと同じ牢に入り、エレノア(ベルセリアのではない)の具現化を強要させられていたっぽいが、前回スパーダと一緒に脱出しました。
ローエンは、ガロウズとシンクとともに脱出。でもリーガルは、アリシアの具現化を阻止するために牢に残りました。その後どういう経緯で安置室に入れられたのかは不明だけど、ジョニーのようにアンチ・ミラージュブレスをはめられて衰弱していったのかな。死なせるわけにはいかないから、いったんあそこに収容したとかそんな感じでしょうか。

で、ヨーランド様のことだけど。
6章でデミトリアスが「虚無の保護のためには太陽神ダーナと精霊の力が必要だが、神降ろし計画は尽く失敗しているため、ダーナ神の器にもっとも適するダーナの巫女をみつけた方がはやい」などと話しています。リヒターとアステルのみつけた文献に「アイフリードが精霊の封印地なる場所でオリジンと共にダーナの巫女を守っている」と書かれていたので、それを探しに出掛けたようだったのですが、みつけてきちゃったってことなの??
ヨーランドがシャーリィの体を借りていたときは、精神体として意識だけ飛ばしているような感じだったけど「招かれざる客が来ちゃったみたい」と言って戻っていきました。その後帝国側に体を奪われたってことなんでしょうか。

まだすべての精霊が目覚めているわけではないし、精霊イベントにてシルフが「……なんだ、やっと来たと思ったらダーナの巫女じゃないのか」と言っていたので、ダーナの巫女として完全に覚醒はしていない状態だと思うけどどうなんだろう。
でも、ヨーランドの体がある、ということは、神降ろしの儀式はその体を使って恐らく成功してしまうので、デミトリアスの目的も前進しそうです。今後動きがあるかも。

ファントムという幻影について

わ~~もう~~しんど~~って感じでした。
いろいろ言いたいことはあるけど、まず「自我が希薄になっている」のはどういう状況なのかって話。1部終章で、ジュニアがアニマの力を弱める守護魔鏡を使い、ファントムとフィリップとのアニマ共有能力を弱め、アニマを回復することが出来ない状態に追い詰めました。恐らくほとんど死んでたんだろうね。でもビクエ級の能力と仮想鏡界をつくる能力に目をつけたメルクリアらが拾ってきて延命させていた様子。だから物理的なダメージのせいで自我がなくなっているのはもちろんだけど、実際には心的な傷によるところが大きかったんだろうなと思う。
ファントムは、「私はあの時のフィルの感情を鮮明に覚えています」「お前は負け犬なのだよ、フィル」というように一人目のフィリップのことを「フィル」と呼んでいます。
彼は自分の目的について「さあ、新たな世界を。歪んだ私の望む、私と彼女のためだけの真に正しく歪んだ新世界を――」「私は、私を私として受け入れる世界をつくるだけだ」と言っているけど、1部の最後にイクスたちと戦ったあとは「私」ではなく「フィルだけを受け入れるゲフィオンと彼女が望む世界をここに――」と言います。
なんていうか、「私を捨てようというのか、勝手に生み出しておいて、感情を与えておいて、私が歪んでいるから――」「嘘にまみれた世界に無理やり生み出されたことを憎いとは思わないのか!?」と、自分の生の苦悩を理由にしつつも、本心を押し殺してばかりの「フィル」のために理想の世界をつくりたかったのが本当だったのかな、と改めてシナリオ読み返して思いました。
そこまでやってきたのに誰からも認められず、結局フィルからも拒否されたことが傷となって、自分というものがなくなってしまったんでしょうか。
具現化された「もうひとりの自分」は、フィルが言ったように「分岐点から違う道を歩む自分の可能性」、リアライザーなんだけど、根っこは間違いなく同じ人間なんだよね。だからファントムとしての自我が消えかけているならファントムとして歩き出す前のフィルに戻っていそうじゃん。でも今回のシナリオを読むと、自我が希薄になっているにも関わらず彼の一人称は「私」だし、自我が戻り始めたときの最初の言葉は「フィル」だった。あくまでも彼は、フィルではなくファントム/リーパで、自分は自分だっていう意識が強いんだろうなと思ってちょっとしんどかったです。そんな人が自分を無くしてしまったことがとても。

さて、シドニーが行った心核解放作業によってファントムの体はバルドに明け渡されたわけだけど、リビングドールに用いられている「心核を取り出して別の存在を入れる」とはまた別の手法らしいよね。心核を解放したら一時的に別の存在を取り込める状態になるってことなのかな?
少なくとも、ファントムの精神の死を意味するとは思えない(バルド自身がその結果を一番嫌っているわけだし)からいつかは返すつもりなんだろうけど、一時的に体貸すだけとはいえ、その状態に拒否反応を示す人もこれまでたくさんいました(マーテル、フレンの件とか)。
でもファントムに関しては、その体を使うことに誰も反対する素振りがなかったのがまたしんどかったなと。それは、フィルも幼なじみたちも「無理してる」からなんだろうなと思ったからです。
フィルも、ゲフィオンの記憶を得たミリーナも、(精神)年齢的にはいい大人だし、今まで好き勝手に復讐し尽くしてきた負い目がある。今さら自分の望みなんて……って本当に思っているから、たぶん一番大事なもの以外のことは全部切り捨てることにしたんじゃないかな、と思うのです。ミリーナだったらイクス以外、フィルだったら彼らのためにこの世界を救うということ以外は。ファントムはそこに入っていないから、彼らは無理してでも何も言わない。あいかわらず一番大事なもの以外大切に出来ない彼らがしんどい。

『ヴィクトル』

最後ほんとびっくりしたよまじで。Pさんの言ってた「不意打ち」ってこのことだったのか??今まで、こんな唐突に出てくることなんかなかったと思う(とくにパーティキャラ以外は)から、びっくりしました。
クルスニク家のクリスマスイベントのときに、ユリウスが救世軍から渡された資料の作成者について、元の世界であるエレンピオスとリーゼ・マクシアを知る人物の可能性があると言っていましたが、それはアルヴィンがつくった資料だったということがイベントの最後に明かされて終わっていました。だからX2のキャラが他にいるとは思わなかったし、ユリウスの「もしかしたら、あの研究者も関与してるのか……」っていう台詞の方が誰だよって感じする(リドウもバランも「あの研究者」なんて呼ばないよなあ?)
まあとにかくヴィクトルについての伏線はほぼなかったはずなので、今回の登場に驚いた人は多かったと思う。

ただ、帝国側に捕らえられているX2メンバーはいなかったのに、帝国が早いうちからクルスニク一族の力を知って目をつけていたのは、今になってみればヴィクトルが情報を漏らしていたからということになるのかもしれない。
でも「クルスニクの鍵」であるエルをわざわざ危険に晒すとは思えないし、しかも今回の登場は、リヒターたちが去るのを待っていた様子で、すでに分史ミラを助け出し、セシリィのことも託された――どちらかというとバルド側のポジションみたいなんだよね。
彼もまた、「大事な人を亡くしているキャラクター」なので、その存在が帝国側に知られているなら当然「死んだ人を生き返らせたくないか?」という誘いを受けているはずなんだけど、ミリーナ側に協力する意思があるということはその誘いは拒否しているのか?はあ~……

ほかにも、クレーメルケイジのことや、天族や神依の性質を帝国側に伝えた人物がいるはずなんだよな。それについても今後、元の世界での敵味方関係なく登場しちゃう感じなのかしら?もうレイズくん何が起きるかわかんないからほんと楽しみ。 

「死神の呪いを背負った俺に頼むとは。何が起こっても知らんぞ」

フラグやんけおにいちゃん~~~~そして船は魔の空域へ……

これまで出てきている場所としてのキーワード、「精霊の封印地」「僕らの始まりの場所(あの【石碑】)」辺りに流れ着くのでは、と思っています。