二月の星のうえ

テイルズが好きです。ほぼネタバレに配慮していない個人的な感想です。

【TOtR】レイズ3部9章考察。スピルメイズとヨーランドと嘘の世界

テイルズオブザレイズ 3部第9章『絆のスピリア』が配信されましたので感想です。
最近自分の過去の記事とかふせったーとか読み返したりしてたんだけど、3月くらいからの疑問がまだ全然解消されてなくて笑う。こっちもそろそろゼロム化しそうです。
でもだいぶ先かなと思っていたダオス攻略戦やバルバトス攻略戦にこのあと繋がりそうなので、お話自体は前進しているんだろうけど、3部はとくにわからないことが多すぎる……

スピルメイズ・仮想鏡界・現実の関係

最近スピルメイズでの戦闘機会が増えましたが、なんかスピルメイズと仮想鏡界とがごっちゃになってよくわからなくなってきたので整理。

【仮想鏡界】
鏡士の心の中の一部を具現化した仮想空間。現実と「ゲート」を通じて人間やモノが実体化したまま行き来できる。仮想鏡界は、意識の奥にある無意識の領域を具現化しているが、そのさらに奥に世界と繋がる「集合的無意識」の領域が存在する。そのため、仮想鏡界は世界と繋がっており、世界を支えるダーナや精霊の影響を受けやすい。
なお、なんらかの干渉により仮想鏡界が崩壊した場合、中にいる人たちは術者の深層意識の中に閉じ込められてしまい、術者の心もそれを異物と認識して崩壊する。
※3部の浮島のアジトは、仮想鏡界を現実に具現化したもの。

【スピルメイズ】
スピリア(心)内部の迷宮。基本的にはソーマ使いがスピルリンクすることで中に入れる。魔鏡で力を増幅したりすると、ソーマ使い以外も一緒に行ける。スピリア内を進んで、仮想鏡界に出ることもできる(さらにそこからもといた場所とは違う現実の場所に出られる)。仮想鏡界と同様、集合的無意識とつながる場所であり、ダーナの心核や精霊に異変があったときに影響を受けやすい。

つまり、「ティル・ナ・ノーグ世界の根幹(ダーナの心核や精霊の領域)」と繋がる「集合的無意識」と繋がる「スピルメイズ⇔仮想鏡界(ほぼ同じ層?)」と「スピルリンク/ゲート」を通して「現実」が繋がっている、ということのようです。ややこし~

そういう理屈で集合的無意識で繋がっている個人のスピルメイズ同士の境界も曖昧らしく??今回、フィリップとリチアにそれぞれスピルリンクしたはずの人たちが、スピルメイズではちあわせるなんてことになりましたが、ヨーランドの説明によるとそれは「イクスの魔鏡結晶を通じてフィリップの心とリチアの心が混ざり合っている状態」で「イクスがリチアから物理的に近い場所で転移ゲートを使用したことが、心が混ざりあった原因」だそうです。
う~ん、まあよくわからないんだけど、リチアとの物理的距離が関係あるならなぜわざわざ遠くにいるはずのフィリップの心と混ざるんだろうねと思ったんですけど、もしかしたら「イクスの不安」はもともとフィリップに向けられていたものだったのでは?と思いました。

イクスは少し前から「自分は【誰】なのか?」という不安を抱き、答えを知ってそうなフィリップに相談していましたが、フィリップはまだそのことに向き合えないので「少し猶予が欲しい」と話を先延ばしにしていました。
イクスは賢いので、フィリップに話すよりもっと前から違和感に気付いていたし、自分も世界も全部嘘なんだ……という葛藤はずっとあったんだろうけど、その不安が抑えきれずゼロム化する程にトドメさしたのはフィルの回答延期に他ならないと思うんだよね笑
いやね、3部イクスは1部と比べて別人みたいに優柔不断さや慎重さがなくなったし、(それが成長なのか何かの作用で性格が変わったのかどうかは別として)ミリーナや歴代主人公たちと接するなかで覚悟決めたのかな? と思ってたんだけど、今回の話読んで、やっぱ全然覚悟出来てないじゃん!そうこなくっちゃ~~!って逆に安心しちゃったりしたんですけど。最近のイクスの一番のストレスって「俺から生まれる感情がクリエイトされてないって誰が証明してくれるんだ?俺は【誰】なんだ?はやく誰か教えてくれ」という焦りだったと思うし、それに対する不安が攻撃性持って向かう先は、もともとはフィルだったと考えてもおかしくはないかな~と。
リチアの近くで転移ゲート使ったから(転移ゲートも恐らく仮想鏡界の一種なので展開したら混ざってしまい)イクスから溢れていた「不安」がフィルじゃなくてリチアのスピリアに流れ込んじゃったんじゃ、それでリチアとフィルのスピルメイズにもパスが通ったんじゃ、と思いました。まあ本筋とは関係ない話だしこのへんの設定よくわかんないんですが。

ダーナの巫女、ヨーランド

今回ヨーランド様の実力が少し明らかになりました。
修復不可能なほど荒れたスピルメイズを修復してしまったり(以前にシャーリィの心核も治療していたけど似たような能力か)、魔鏡通信が使えないはずの魔の空域でも魔鏡通信使えたり、魔鏡通信を通じて離れた場所にいる人にスピルリンクしたり、ソーマ使いがいなくてもスピルメイズから脱出できたりとか、まさに「チート」そのものでした。
現状、世界最高の鏡士の称号をもつのはフィリップ・レストンですが、彼をしても「レベルが違いすぎる」とのこと。
しかしそこまでチートなのには理由があるようで、ヨーランドは「自分は普通ではない」と繰り返し言います。

「でもこれは別に私が特別優れている……というのとは違うの」
「ええ。私、ティル・ナ・ノーグではとっても便利な存在なの。だから、自分を卑下しないでちょうだいね。私は特別。不自然な存在。そこにはそれなりの理由がある」
「言ったでしょ。私は不自然な存在だって。私がこんなことをできるのは私が【ダーナの巫女】だから。人間にこんなことをできる方が――おかしいのよ」

さて、この言い方からすると、ヨーランドは【ティル・ナ・ノーグ世界でのみ】【規格外の力を発揮できる】。また「私は人間なのにこんなことが出来ておかしい」のか「私は人間じゃないから人間には出来ないことが出来る」のか微妙に読み取れないのですが、彼女は【人間ではなくなった存在】と定義して差し支えないかと思います。

ニーベルング世界からティル・ナ・ノーグ世界へ渡ってきた人なんだろうなと思っていましたが、旧世界の生き残りの子孫であるらしいウォーデンらにはヨーランドのような力はありません。彼女は眠っていたとはいえ何千年も生きていることになるし、やっぱりただの人間じゃないんだよね。

じゃあ何者なのかって話ですが、3部2章にて「太陽神ダーナとは元は人間で、ティル・ナ・ノーグをつくった鏡士だった」ということがわかりました。また、「ダーナの心核が壊れれば、この世界も崩壊する」ということにもなっています。加えて今回、「ヨーランドが(本来目覚めるべき時でないのに)目覚めてしまうと世界が崩壊するきっかけになる」とも言われました。
つまり「この世界を維持しているのは、ダーナの心とヨーランド」ということになります。(精霊もそこに含まれるけど一旦おいときます)

そういう構図なんだろうなと考えると、ティル・ナ・ノーグ世界は、ダーナ自身の巨大なスピルメイズあるいは仮想鏡界なのかな~という気がしてきます。

ミリーナの仮想鏡界をイクスが現実に具現化した際、島をひとつ誕生させましたが、さらに大規模な具現化を行ったものがこのティル・ナ・ノーグ世界であるとか。
とくに、世界の維持にヨーランドも関わっているのは、ミリーナの仮想鏡界を維持するためにカーリャが鏡界の中にいなければならなかった状況と似てるかな?と思う。

というわけでまあ言うだけならタダなので言っときますが、「ヨーランドは鏡士ダーナの鏡精ではないか」とも考えられないでしょうか。
彼女は何千年も過去の人物とされていますが、鏡精だったら鏡士からアニマの供給がある限り恐らく消えません。(供給はダーナの心核からあると思われる)
また、能力が明らかに人間離れしていますが、「ティル・ナ・ノーグでは便利な存在」と自分で言っているとおり、主人が作り出した世界の中だからこそこれだけチートやれているとも考えられます。

ついでに言うと「ソーマ使い」も、鏡映点たちの中では異色というか、スピルリンクなんてこの世界では本来鏡士にしか出来ないレベルの越権行為が、能力がエンコードされずにそのまま出来てしまっているので、「鏡士」および「ソーマ使い」がこの世界で優遇されていることをもって「ティル・ナ・ノーグ世界自体が誰かの心の中・仮想鏡界・スピルメイズみたいなものである」とも考えられないかな。

とにかく、持ち主の心が壊れると世界ごと崩壊する点とか、スピルメイズや仮想鏡界の成り立ちとよく似てるんですよねレイズ世界。なので、その中で好き勝手できるヨーランドは、ただの優秀な鏡士なんかじゃなくて鏡精とか精霊とかそういう人間とはちがう存在なんだろうなと思ったということです。

ところで、フィルより明らかにレベルが上の自称鏡士って今のところイクスとヨーランドしかいないんですけど、ヨーランドが人間以外の何かだった場合、イクスもそうだったりするのでは?と思う……

昔考えたことで今の状況とはちょっと違いますが、今読むとへ~なるほどって思えるのでここらへんも参考にどうぞ。(昔考えたこと大抵忘れてる)

シンクと八番目がみつけた自由

今回、シングはシンクに対して(レプリカとして生み出されたという事情を知ったあとでも)「シンクと仲良くなりたい」「レプリカだからって偽物だなんて思わない」「シンクのスピリア(心)はシンクだけのもの」とストレートに伝え、シンクから「はぁ?馬鹿じゃないの」と呆れられていました。

なんか、シンクがシングには怒りさえしないのって、シンクにとってこれが「的外れ」な意見だからなんだよね。
だってシンクは「この世界に生まれたこと自体を恨んでいる」から、最初から愚かしい生を受けてしまったから、この先どう生きようがもう彼の人生は穴のあいたバケツみたいに空っぽでしかない。彼の主張はそういうものです。
(なので、シンクを本気で怒らせたジェイドやカジノイベのときのミトスは、シンクの苦悩をよく理解して痛いところをついているともいえる)

彼は代替品として何人もつくられたレプリカのうちの一人で、一度は廃棄もされている。原作アビスの人たちはそういうシンクの境遇を知っていたばかりに、誰も安易に彼に対して手を差し伸べられなかったと思います。
イオンやアニスあたりが彼に言葉をかけることはあったけれど、シンクと真の意味で同じ立場の人はいなかったので、シンクは誰の手もとりませんでした。

で、今回、光の主人公のシングがかけた言葉は、輝きを放つ眩しい言葉(あるいは理不尽なほど善であるがゆえ酷な言葉)でしたが、的外れだったとはいえ、それはシンクにとって初めてといってもいい経験だったと思う。
今までは彼に対して誰もそんなこと言えなかった。生まれたときから自分の生を呪った子と、誰も同じ闇を共有できるはずもないから、何も言えなかったんですよ。
いやほんと、シンクの抱える生の深刻さとシングの言葉の前向きさはあまりにも乖離しています。でもだからこそそういうこと言っちゃえる人が貴重というか、今回シンクと出会ってくれてよかったなと思える。これでシンクが救われたとは思わないけど、ミトスの新しい友達だ~って喜んでるジーニアスとか、服をひっぱって無理矢理連れて行こうとするラタトスクとか、可哀想な子だなんて気を遣わずにそうやってみんなどんどん土足でやってきてシンクに接してくれていいからな、と思う。それでシンクの傷が抉られようとも、全然救われなかったとしても、原作の2年という短い一生ではできなかった経験をたくさんさせてほしいと個人的には願います。
ただ、原作で「生まれてからずっとボクは空っぽさ」と言って死んでいったシンクの一生も私は愛しているので、それが否定されるくらいだったら無理にレイズで救おうとしてくれなくて全然構わないですけれど。

また、導師イオンの真似をすることも結局は「シンクとイオンは違う」と主張するのと同じだというジェイドの指摘のとおり、どうやらシンクは自分を代用品にすらなれなかったゴミだと言いつつも、無意識にそれだけではないと思っているらしいのが今回かなり言動に表れてしまっています。
自分については原作などで「ゴミ」と言い、八番目のイオンのことは「生ゴミ」と微妙に呼び方を区別しているし。
カジノイベントでもミトスから「自分からは死のうとしない」と指摘されていたけど、やっぱりシンクは自分で認めてないけど心のどこかで諦めていないんだよね。他の誰でもない「シンク」として生きることを。

それをジェイドやアニスも少し感じたんじゃないかな。彼の憎悪の対象だった預言がない世界に来てしまって、なぜか友達もできてしまった、シンクの心の変化を。
シンクが具現化されてからゆっくり話す時間を持てたのジェイドはこれが初めてだったと思うけど、必要以上に煽るというか茶化したりしてここぞとばかりにちょっかい出してました。もちろんジェイドはシングと違い、シンクと仲良くなろうだとかシンクに自分を大事にしてもらいたくて声をかけてるんじゃありません。むしろ彼に何を言ってもそんなことは不可能だと理解しているし、フォミクリー発案者のジェイドはシンクにとってまさに恨みの対象で、シンクに寄り添える立場じゃない。レイズ世界に来ても、原作でのことやシンクの生まれについて水に流すことはできないしシンクの苦悩も劣等感も消えることはない。
でも原作では「シンくん♪」なんて冗談すら言える状況じゃなかったんだよな、と思うと、原作と地続きの時間の中で、原作での恨みや苦しみの記憶をお互いに背負いながら、原作の重みをそのまま乗っけながらでこんな会話が見られる奇跡がすごすぎるとしか言いようがないんだよなあ。
レイズのシナリオ読むだけでカロリー消費する気がするのはそういう壮絶なことやってるからなんだろうなってなんか改めて思いました。

それで、まあいつかは名前付けてくれるんだろうなと思っていたけど、八番目のイオン様にも、原作と同じようにアニスが名前をつけてくれました。
【リベラ】。古代イスパニア語で【自由】という意味。しがらみや縛り付けるものなんかはねのけて自由でいて欲しいという願いが込められています。

ローレライ教団の教団兵だからか古代イスパニア語をきちんと覚えていたのか、「リベラ」という言葉の意味だけ知っていたのかは不明だけど、名前の意味をアニスが説明する前にシンクが「……」って無言だったのも最高だった……何考えていたんだろうね、「自由なんて無理だ」と思ってたのかもしれないし「ボクもここでは自由なのか?」とか思っちゃってたのかもしれないし本当に最高の無言でした。

ところで原作でもアニスはイオンの死後に発見されたレプリカに、古代イスパニア語で「無垢なもの」を意味する「フローリアン」という名前を付けていたけど、ギリシア語で「イオン」は「すみれ」を意味しその花言葉に「純潔、無垢」があることを思うと、フローリアンはまだイオンとの繋がりを連想させる名前ではありました。
【リベラ】はそういった意味でも自由なんだなという感じがする。原作から、イオンから、他の何からも自由。一体どんな子になるんでしょう。

いのまたむつみ画業40周年記念画集 Sanctuary

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