二月の星のうえ

テイルズが好きです。ほぼネタバレに配慮していない個人的な感想です。

テイルズオブアライズ 考察まとめ ―シオンの運命の相手、主人公の対としてのヴォルラーン

テイルズオブシリーズの完全新作であるテイルズ オブ アライズが2021年9月に発売されました。
約5年ぶりの新作ということで私も楽しみにしていましたが、シリーズ最速で世界累計出荷本数100万本を突破するなど想像以上に盛り上がっているようです。

アルフェンやシオン、ヴォルラーンについての気になる設定やストーリーに関することなどいろいろ考察してみたのでよかったら読んでください。
ツイッターで載せていた内容を抜粋して少し加筆しております。

※ クリア後、エンディングまでのネタバレを含みますので未プレイの方はご注意ください。
※シナリオや設定に関する愚痴、批判的な内容を含みます。

 

シオンに〈荊〉が発現した原因は「ヴォルラーンが誕生したから」なのではないか

なぜ今になって突然シオンに〈荊〉の呪いが発現したのか、その理由が「アルフェンが目覚めたから」とかではなくて「〈王〉ヴォルラーンが誕生したから」だったとしたら、シオンの運命の相手は本当はヴォルラーンだったのではのではないでしょうか

300年前のネウィリの意志に触れた時、彼女はこう言っていました。

「今の私にできることは、〈巫女〉の力で世界に破滅をもたらすこの存在を封じ続けるだけ。レナス=アルマが再び作られ新たな〈王〉が現れる日まで。たとえ、子孫にこの呪いを託すことになっても」

この言葉と、シオンの〈荊〉の呪いがレネギスの人々にとっても正体不明だったこと、シオンが家族や一族の者も含め誰とも孤独を分かち合えなかったということから、恐らく、アイメリス家の中でもシオンだけに突然〈荊〉が発現したのだと考えられます。
(ネウィリ本人も、巫女の力で荊を封じていると言っているので呪いは出ていないと思われます。シオンが研究対象とされたことからも、"触れると痛い呪い"が出たのは300年間でシオンが初めてだったのではないでしょうか)

なぜシオンに突然荊が現れたのかは作中でたびたび疑問視されつつもとくに解が示されていませんでしたが、上記のネウィリの言葉から、荊を倒す条件が整うまで巫女の力とネウィリの意志のようなものが荊を封じていたけれど、その条件がシオンの代に整ったからネウィリの封印が弱まって荊が発現したのではないか(※)と考えられます。

ネウィリが考えていた荊を倒す条件は「レナス=アルマが再び作られ、新たな〈王〉が現れること」ですが、その〈王〉とは、時期的にも文脈的にも、アルフェンではなくヴォルラーンのことだったのではないでしょうか。

アルフェンの目覚めは、単に治療が終わったタイミングが300年後の現代だったというだけで、〈巫女〉とか〈荊〉とかスルドブリガの周期と彼は無関係でした。
ネウィリが荊を倒す条件として想定していたのも「新たな〈王〉の出現」であり、「アルフェンが目覚めること」ではありませんでした。

アルフェンが目覚めたのはカラグリアでシオンと出会う1年程前のことですが、シオンの荊が表に出てきたのは彼女が物心つく前なので、だいたい16年前くらいだと考えられます。(現在のシオンは19歳)
ヴォルラーンの年齢は不明ですがアルフェンと同年代だとすると20代前半です。彼がいつダナからレネギスに連れ去られたのかは不明ですが、シオンに荊が現れた頃と同じだったとしてもおかしくありません。
そうなると、ヴォルラーンの誕生あるいは〈王〉としての調整が開始された時期と、シオンの〈荊〉の発現時期が、300年の時の流れからするとかなり近いため、やはりシオンの〈荊〉の出現は〈王〉の出現と呼応していた可能性が高いと思います。

新たな〈王〉になるヴォルラーンが誕生したから、荊を倒す条件が整い、荊を封じてきたネウィリの力が弱まり、シオンに〈荊〉が発現したということなら、世界を破滅から救うことをネウィリに託された未来の王と巫女は、ヴォルラーンとシオンだったということになりませんか。

つまり、何が言いたいかっていうと、シオンは本当は〈ヴォルラーンの巫女〉だったんじゃないかってことです。
王ヴォルラーンの対になるべくして生まれた巫女。
アルフェンのじゃなくて。ヴォルラーンの女だったんじゃないでしょうか。

つまりつまり、アルシオのこと運命のペアだと思ってたんだけど、本当はヴォルラーンとシオンの二人こそが運命だったんじゃないでしょうか。

(ネウィリ以降〈巫女〉の運用は廃止され、巫女の機能は人間ではなく装置に置き換えられていますが、ネウィリの考えていた世界を救う王と巫女はアルシオじゃなくてヴォルシオなんじゃないか???という話です)

でもそれを、たまたま過去に〈王〉だっただけの、300年前に生まれた人間で現代とは無関係な男が、たまたまシオンに出会って、シオンの運命を横からかっさらってしまったんじゃないか????????

まぁヴォルラーンはヴォルラーンでその運命の役目を完全に放棄しているので、アルフェンがヴォルラーンにとって略奪者だったのかというとそうでもないのかもしれませんが、何かを奪うこと奪われることを拒否し続けた男が実のところ誰かにとって略奪者であり簒奪者でもあったというのはかなり面白い観点なのではないでしょうか。

しかし過去の人間であるアルフェンが現代に目覚めて世界の命運に関わってくるなんて、本当、誰もそんなこと想定していなかったんですよね。ネウィリもヘルガイムキルも。
マジでアルフェンはこの物語とは無関係だったのに、シオンと出会って、シオンに拒否されても、"勝手に"そこへ関わってきたんですよ。「俺は俺で勝手にシオンを助ける!」とか「運命でも宿命でも使命でもない。シオンと生きる」と言っていたように。
それでついにシオンの運命を横からぜんぶ奪っていってしまったんじゃないでしょうか。

なんて傲慢な主人公なんだ……………………………(褒め言葉)


※〈荊〉の出現理由は、レナス=アルマ完成や世界の破滅の時期に向けて荊の大元であるレナの星霊が力を増したことでネウィリの封印の力を上回ってしまったということも考えられると思いますが、ここではシオンとヴォルラーンの関係性について着目したいので、ネウィリの発言のみを根拠としています。実際は同時期にいろいろな条件が整って、荊が現れたのだと思います。
レナス=アルマの再生成に足りる星霊力を集め終わって、ネウィリが予言したように新たな王と巫女が出現していて、レナの星霊の力も高まって……というのが全部同じ時期に揃うことになるのは偶然なのだと思いますが物凄い運命力ですね……

この世界はヴォルラーンが救うはずの世界だったのではないか

この物語はアルフェンがいなくてもヴォルラーンがいれば一応世界の破滅の回避は可能だった、という構図なのは面白いなぁと思います。

ヴォルラーンにも世界を破滅から救う力や資格(〈王〉の機能)が問題なく備わってるし、実際ラストバトルでは、レナス=アルマを使って巫女もろともレナの星霊の核を消滅させようとしていたから、世界の破滅を止める気はあったんですよね(アルフェンへの嫌がらせの面の方がでかいけど)。

まぁそれで世界が存続したとしてもダナレナ共存とかそれどころではないしヴォルラーン以外には奴隷しか存在しない屍の世界にはなるけど、「世界を〈破滅〉から救う」という未来は実現されます。
主人公になれなかった男が勝った場合も結果は変わらず世界救われちゃうんですよね。

というか最初からこの物語は〈王〉ヴォルラーンが世界を救う物語だったのかもしれないなとも思います。
まるで彼のために用意されたみたいに、破滅を回避するための条件はすべて整っていたのだから。

むしろヴォルラーンがこの物語にいる必要性、役割を、アルフェンが横から出てきて奪ってしまったのではないでしょうか。
ヴォルラーンがいれば曲がりなりにもこの世界の物語は続いていくしその後またアルフェンみたいに立ち上がる人が現れるかもしれないから希望がないわけじゃない、世界が終わるよりはヴォルラーンに救われる方がマシだった、一旦はそれでいい、この世界はそう進む予定だったのではないでしょうか。

アルフェンがいてもいなくても世界の破滅を回避する結末は変わらないし、彼はこの物語にぜんぜん関係なかったのに、世界に対してもヒロインに対してもグイグイ来てとうとう世界も好きな女もみんな救う完全無欠の主人公になってしまったんですよねあの男……(褒めてる)

やはりそういう意味でもアルフェンはヴォルラーンにとって略奪者だったのかもしれなくて、あれだけ追いかけ回された理由もそこにあるような気がします。(ヴォルラーン本人は世界を救う役割なんてどうでもいいのだろうけど「何かを奪われたこと」自体が気に食わなかったのかも)

 

ヴォルラーンにはアルフェンとは逆に〈痛覚〉しかなかったのかもしれない

ヴォルラーンの剣は、アルフェンの炎の剣と同じようにマスターコアの力で作り出した水の剣のように見えますが、冷気を帯びているようにも見えるし、その冷気は剣を持つ手までも凍らせているように見えるから、アルフェンが炎の剣を使う度に大火傷をしているのと同じようにヴォルラーンも毎回凍傷とかになっていそうです。
しかし彼の場合、治癒してくれる仲間は誰もいないんですよね。

アルフェンは「シオンがいつもそばにいて治癒してくれるからこそ炎の剣を振るえるんだ」と言っているので、自らをも害する剣を持つ者同士でヴォルラーンの孤独が対比されているのかもしれません
ヴォルラーンはアルフェンと同じ〈王〉で同じような力のある剣を使うのに、かたやいつも傍で見守り傷を治してくれるひとがいて、かたや愛する人も友も仲間もなく王と対になるはずの(人間の)巫女すら与えられなかったという。

でも実際その剣使う度に凍傷なってるけど大丈夫なの?痛くないの?誰が治してくれるの?というツッコミを入れようとしたけど、よく考えたら痛覚戻ったアルフェンも「炎の剣使って痛くないの?」と聞かれたとき「戦いの最中は耐えられる」とか言うし(ええ……そんな根性論……)炎の剣よりもアルシオの絆の炎の方が燃えているんだ!みたいな回答しかされなかったから細かいことを気にしたら負けなのかもしれない……
と思ったけど、そういえばヴォルラーンの言葉や行動には「痛み」というキーワードがよく出てくるんですよね。

アウメドラを刺して「痛いか?その苦痛こそ、紛う方なき生の証。愉しめ」と言ったり、ダナで奴隷だったときのことを「俺が覚えているのは背中に振り下ろされる鞭の火のごとき痛みだ」と言っていたり、シオンに撃たれて傷を付けられたときや〈荊〉の痛みに触れたとき楽しそうにしていたり。

最終決戦でのアルフェンとの会話の中で、彼には愛する人も友もなんにもなかったということがわかるけれど、もしかしたら彼はこの世界で、優しさやぬくもりではなく〈痛み〉しか受けたことがなかったのかもしれないですね。
物理的な痛みはもちろん支配による屈辱や奪われる絶望、嫌悪、憎悪といった痛み……。
目は見えるし耳も聞こえるけれどそこからの情報で心が動かされることはなく、痛みからしか何かを感じることが出来ず、自分が生きている実感も痛みでしか得ることがなかったのかもしれません。

アルフェンとは逆に、彼は感覚器官が〈痛覚〉しか残っていなかったのではないでしょうか。
ヴォルラーンとアルフェンは何においても対比されるべき存在だから、そこも正反対になっている構図なのかもしれません。

だから彼は他者に対して〈痛み〉しか与えられないのかもしれないですね。彼はそれしか知らないのだから。彼にとって〈痛み〉だけが世界との唯一の接点だったのかもしれないから。

シオンを平然と抱き寄せたりしていたから、ヴォルラーンも実験とかいろいろされすぎて痛覚がないのか?とも思ったけど、むしろ〈王〉になってからの彼は強すぎて自分を傷付けてくる相手がいないから、生を実感させてくれる〈痛み〉を愉しんでいたのかもなぁという気もします。

「この痛みは君の心に触れたから」のキャッチフレーズ使ってヴォルラーン主人公の話もやってもらえませんかね??????

(以下愚痴です)
ヴォルラーンまじで背景が何もわからないからすべてが妄想になってしまう 「かもしれない」ばっかりの文になってしまう
ヴォルラーンに関してそもそもの描写がなさすぎるの本当になんでなんだろう 考察の余地があるとかではなく圧倒的に何も説明がない なんで??何かで補完する気なの??だとしても少なすぎじゃない??最後までなんなんこいつ??って思うしかないのもったいなすぎた

 

いばら姫の呪いを解くキス

シオンの原型には童話『いばら姫』のモチーフがあると思いますが、『いばら姫』は呪いによって周囲を荊で囲まれ100年の眠りにつくけれど王子のキスで目が覚めるという物語です。
つまりシオンも、本当の意味で彼女の〈荊の呪い〉が解けたのはエンディングでアルフェンが彼女にキスした時だったのではないかと思います。

シオンの〈荊〉は、触れた相手に激痛をもたらすとか世界を破滅に至らせるという性質がありますが、シオン本人とっては、誰とも触れ合えず愛し合えないっていうことが一番の呪いだったわけですよ。

ラスボス後、シオンの中から〈荊〉が消えてその呪いから解放されましたが、もしもアルフェンや仲間たちがシオンを好きにならず、誰もシオンの手を握ったり抱き締めたりキスしたりしてくれなかったら、誰とも触れ合えないままだったら、本当の意味でシオンの〈呪い〉が解けることはなかったんじゃないかと思います。

いばら姫の物語と同じように、アルフェンがキスをしたことでシオンは目を覚まし呪いが解けて、彼女の幸せな人生がここから始まる……ってもう王道中の王道なんですけど本当ハッピーエンドの物語の終わり方だな~と思います。

シオンの胸に剣を突き立てる意味について

ラスボス後のムービーで、アルフェンがシオンの胸に剣を突き立てるという象徴的なシーンがあります。
ここでは〈剣〉という概念がとても重要な役割を持っています。
たとえばシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』では、ジュリエットが自ら剣で体を貫いて自殺するシーンがあるのですが、剣は"男性性"、"男根"の象徴であるので、その剣を自分の体に受け入れるということは男女がひとつになることの暗示と解釈されます。アライズのラストも、アルフェンとシオンが真に結ばれるシーンなのでそのように解釈できます。

また、シオンの胸から剣を引き抜いて始まった彼らの物語が、剣を鞘に収めるようにして終わる、という美しい帰結のシーンだとも解釈できます。

つまりあのシーンは、荊を消すための行為であるだけでなく、男女の愛のクライマックスでもあり、物語のクライマックスでもあるわけで、二重の意味で最高潮なのですからそりゃキスもするわ~~と思いました。

アルシオも、ダナ人とレナ人、過去の人間と現在の人間、触りたくても触れない、といった壁や断絶を乗り越えて結ばれようとしてるのでロミジュリの文脈なんだよな~と考えるとやっぱりアライズはストーリーも演出もほんとうに王道なんですよね。

(以下愚痴です)
ただ、シオンの胸に荊の花が咲く理屈も荊を焼くために胸に剣を突き立てる理屈もよく考えると謎(とくに説明がない)だしシオンの胸にあるのって火のマスターコアだし荊に関係なくない?とかいろいろ思うので、なんかとにかくこういうシーンがやりたい!ってだけだったのかな……みたいに思ってしまう
だってアルフェンがマスターコアの星霊力を実体化させたものがなぜ剣の形をとったのかの説明もなかったから
ヴォルラーンも同じように剣を顕現させるから、〈王〉の力が関係してるんだろうなというのはわかるんだけど、なぜ〈王〉だと剣の形になるのか……

Fateの衛宮士郎みたいに「起源が剣だから」とかアルフェン自身が剣の概念を内包してるのかと思ってたけど最後までとくに説明なかったよな~
招霊の儀のときに〈剣〉が何か役割あるのかとも思ったけど1ミリも関係なかったし……
ストーリー中で「あ~だから剣の形になったのか」って納得するとこなかったよね 見落としてたら教えて欲しいけど
王といえば剣!っていうイメージだけなのかな……なんでもいいから理由つけて欲しかったな……なんか細かいところ雑なんだよな……そういうの気にする人間だから永遠に気にしてしまう 

 

シオンの大食い設定について

シオンは意外と大食いだという設定があり、シオンの可愛いポイントとして作中でも最初から最後まで触れられていましたが、彼女の中に星霊の一部があり常時〈巫女〉の力で抑えていたわけだから、普通に考えてかなりのエネルギーが要るのだろうし、なによりその星霊が星ひとつ食っても満足できないほどの大食いな性質だったことも関係してるのかな……と思うと、シオンチャンクールな美人なのにご飯いっぱい食べてギャップがカワイイね~~とか言ってる場合じゃなくなってくるなと思いました……

また、シオンはアップルパイとかビーフシチューとかとくべつ美味しいものを食べたときに服がパイ生地だらけになったり口にソースついたままになったりして毎回アルフェンにこっそり指摘されているのですが、レネギスでのシオンは実験体として扱われてたから食事のマナーとかあんまり学べなかったのか、急いで食べないと食べ物がなくなってしまうような経験があるのか、そもそも美味しい食べ物をあまり食べたことなくてがっついて食べてしまうのか……

おしゃれ好きで自分の見た目とか恐らくかなり気にしてるはずのシオンがそこに意識割けなくなるって余程必死なんじゃないでしょうか。
また、彼女は空腹のつらさを身をもって知っているという様子もあったので、もしかしたら餓死しようとしたこともあったのかもしれないですね。どうやっても死ねないと確信していたということは、いろんな死に方を試したということだと思うし……シオンの大食い設定には微妙に闇な部分が見え隠れしてるような気がします。

だからこそエンディングで荊もなくなってアルフェンと結婚して小さな家で二人並んで料理をして美味しいご飯をふつうに食べられる人生が彼女に訪れることが、とても尊いと思えるのかもしれませんね。

 

 

ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

ちなみに私はテイルズのオリジナルタイトルすべてプレイしていますがとくにアビスやベルセリアが大好きです。アビスやベルセリアもあと300万本くらい売れて欲しいのでよろしくお願いします。