物語全体に関わる「カノヌシ」のシステムについてまとめたいと思います。
カノヌシにかかる伝承や解釈
ゲーム中で最初にカノヌシについての話を聞けるのは、3年前のアバル村の古老からです。
このおばあちゃんは、ベルベットの年齢を間違えたり、訳のわからない話を呟いていたりと、なんだかボケているようですが、実は物凄く核心をつくことを言っていました。
「世界は四柱の聖主様によって形作られ、一柱の聖主様に鎮められる。畏れよ、矛盾の飽和を。されば、鎮めの刻きたらん。岬の祠は、名もなき祠。静かな静かな鎮めの祠。名もなきナニカが眠る場所。業魔も聖主も眠る場所。深く深く。静かに静かに。眠るように。消え去るように」
アバル村の人たちは、岬の祠について、「触れちゃいけない場所。地獄に繋がってる」などと言ってあまり近付こうとしておらず、そこがカノヌシを封じている祠だという伝承も伝わっていないようでした。
ですが、このおばあちゃんだけが、古い歌を紡ぐように、カノヌシのことを口にしている……。2周目やったときちょっとぞわっとしました。
聖寮が五柱目の聖主としてカノヌシを祀りはじめたのは3年前の降臨の日以降なので、この時点ではまだ五柱目の存在は民衆に認識されていないはず。
しかも「鎮めの刻」「静かに、眠るように」と、一般人では知るはずのないカノヌシの鎮静化についても触れている。
もしかしたらこのおばあちゃんは、カノヌシを祀る巫女の血筋なのかも。ほかの村人にも秘密で、とか。
なお、テイルズオブゼスティリア公式設定資料集によると、カノヌシについては
・五大神マオテラスの前任とされる。
・カノヌシは名前ではなく「彼の主」、すなわち「名も無き天族」「真名を呼んではいけない天族」という説がある。
と説明されています。
ライラ、ザビーダ、エドナはチャットで何か知っている雰囲気を醸し出すものの、何も口にしませんでした。
アルトリウスの玉座にカノヌシの紋章がひっそりと残っているのみで、謎の天族、ということになっています。
ベルセリアにおいても、カノヌシは基本的に人間・聖隷にとって謎の存在でした。
カノヌシ復活の儀式
さて、このカノヌシは、どのようにして復活したのか。
アルトリウスは、筆頭対魔士として、先代のクローディンの後継者として、世界に溢れる穢れを鎮める方法を探して旅をしていました。
彼は、カノヌシが穢れを鎮めるためのシステムだということを恐らく師であるクローディンから聞いて知っていたのだと思います。
しかし、方法はみつからず、諦めかけたときに、ベルベットの姉セリカと出会いました。
セリカと結ばれ、幸せな日々を送る「アーサー」。
しかし、家族を守って平和に暮らそうと思い始めたアーサーを、悲劇がおそいます。
10年前の緋の夜。アバル村の人々が、アーサーとクラウ一家を業魔化した野盗に差し出したのです。自分たちを見逃す代償として。
ベルベットとラフィを森の中に隠れさせ、アーサーはセリカを助けに岬の祠に向かう。
しかし、あと一歩間に合わず、セリカは祠の穴の中へ落ち、底にいた「ナニカ」に喰われてしまいます。
アルトリウスは、古文書(たぶん『忌み名の聖主~その伝承と考察~』)を解読し、カノヌシ復活の儀式には「緋の夜に、強い霊応力をもった穢れなき魂を、ふたつ生贄に捧げること」が必要ということまでは知っていました。
しかし、カノヌシを封じた場所がどうしてもみつからず、実行することが出来なかった。
それが、偶然、10年前のこの夜に条件が揃い、カノヌシが半分復活しました。
半分だけ復活したカノヌシ
この儀式ですが、落ちたセリカのお腹の中に生まれる前の子どもがいた、ということが一番重要。
その子どもの魂こそが、「強い霊応力をもった穢れなき魂」で、これが一つだけ生贄になったので、カノヌシが“半分”復活したのです。
逆に言えば、セリカの魂は「霊応力が不十分だった」もしくは「魂が穢れていた」ということになります。セリカ姉さんは出来た女性なので、おそらく前者ですが。
なお、このときセリカはシアリーズに、生まれる前の子どもはライフィセットとして聖隷に転生しています。
カノヌシが半分だけ復活した10年前の緋の夜のことは、一般に「開門の日」と呼ばれています。
その日を境に原因不明の業魔病が流行し始め、地獄の門があいて、あの世とつながったような世の中になってしまったという。
しかし「業魔病が流行」というのは、聖寮が民衆に広めた“嘘”で、その本質は、
・「業魔病」という病気ではなく、人間は、心に抱えた穢れが溢れれば誰もが業魔になる。
・穢れとは、理性では抑えきれぬ負の感情である。
・カノヌシが半分復活したことで、人間全体の霊応力が増幅されて、今まで見えなかった業魔が見えるようになっただけ。
・霊応力のない人間には、突然凶暴化したように見えていた。
というものです。
カノヌシの完全復活へ
最愛の女性と息子を失った悲しみになかば絶望しながらも、アルトリウスは“世界の痛みをとめる”救世に突き進むことになります。
その方法ですが、アルトリウスは回想シーンの中で、「クローディンでも二柱との契約が限界だった。四柱と契約するのは不可能なので、五柱目の力を使うしかない」と言っており、どうやらカノヌシの力を使うかどうか検討していた時期があるようです。
聖隷(Zの天族と同じ)は、人間の祈りを集めることで自身の領域内に加護をもたらし、穢れを抑え込むことができます。
とくに力の強い聖隷を、地水火風を司る四聖主としていますが、アイゼンたち聖隷にとっても「聖主は話でしか聞いたことのない伝説上の存在」で、通常はその力を認識することは出来ないようです。
ベルセリアの時代では、人は祈りを忘れ、この四聖主は眠りについているらしい。
彼らを起こして契約し、加護領域を復活させ、穢れを抑えるという方法も、あるにはあるようです。
しかしどこかの時点で、先代筆頭対魔士にも出来ず方法もないので、カノヌシを復活させた方が確実、という結論になったようです。
さて、カノヌシを完全復活させるには、穢れなき魂がもう一つ必要でした。
カノヌシが半分復活してから7年も間があいているのは、次の緋の夜まで7年待たないといけないからです。
その間アルトリウスが何をしていたかというと、おそらく先に述べた「カノヌシ以外の方法の模索」や「伝承の解読」、「対魔士となる仲間集め」あたりだと思います。
そうして準備を整えるなかで、セリカの弟であるライフィセット(ラフィ)が、「自分を生贄にして」と申し出ます。
アルトリウスの本を読み、カノヌシについて知ったラフィは、十二歳病に冒された限られた自分の命をつかって「お姉ちゃんが幸せになれる世界」の礎になろうとしたのです。
アルトリウスの「なぜ鳥は空を飛ぶのだと思う?」の問いにも満点の答えを出したラフィは、みごと生贄となることが決定しました。
なお、この会話をした時期ははっきりしていませんが、3年前の緋の夜の時点でラフィは11歳。
その次の緋の夜はゲーム本編の時になるので、彼にとってはこれが最後のチャンスでした。
この件がベルベットに内緒にされていたため、悲劇が始まるきっかけとなってしまいますが、それはまた別記事で書きたいと思います。
カノヌシの完全復活へ
かくして、3年前の緋の夜が訪れ、ラフィはアルトリウスの剣に貫かれてカノヌシへの捧げものとなりました。
このとき、ベルベットも一緒に穴に落ちていますが、あらすじ「月下の咆哮」によると
姉弟が落ちた祠の底には”なにか”がいた。それはライフィセットの体を貪り喰らって目覚め、次いでベルベットの体に”力”を流し込んだ。
と説明されています。
ラフィの魂は生贄として喰われ、二つの魂を得たカノヌシは完全に復活。
そしてベルベットの魂はカノヌシのに適合したため喰魔にされた、ということなんでしょう。
アルトリウスに傷つけられたベルベットの左手は、業魔を喰らう異形の左手となる。
それを見てアルトリウスは「喰魔か」と呟きます。
ここでちょっと気になることが。
あらすじに、
アルトリウス「殺しはしない。お前の感情を我が”誓約”とするため……」
「そして――のために……」
という記述があるのですが、これが一体何を指すのかよくわからない。
アルトリウスの誓約ってなんだったんだろう?「絶望を抑える」とか??
なお、この緋の夜は「降臨の日」と呼ばれており、カノヌシが完全復活したことで人間全体の霊応力が増幅され、聖隷がふつうに見えるようになります。
ちなみに降臨の日の直後、シアリーズにセリカの記憶が戻ります。
カノヌシの完全覚醒と喰魔システムの関係、かぞえ歌の考察はこちらをどうぞ。
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