二月の星のうえ

テイルズが好きです。ほぼネタバレに配慮していない個人的な感想です。

【ベルセリア】攻略本からわかったこと。カノヌシの心と体について

テイルズオブベルセリア公式コンプリートガイドをざっと読んで新たにわかったことなどをまとめます。

600ページ超あるなかで一番衝撃的だったのが、用語集のカノヌシとライフィセットの項目でした。

カノヌシ【聖隷名】
カノヌシは心と本体の2つに分けて封印されており、本来はそれが同時に復活するのだが、開門の日に聖隷ライフィセットとして心だけが復活していたため、降臨の日に復活した聖主カノヌシは、弟ライフィセットの記憶をもちながら心をもたない存在となった。それゆえカノヌシはベルベットを「大好きだった」とは言うものの、ベルベットに対する愛情がなかった。 

ライフィセット【聖隷名】
カノヌシによって意思を抑えられていたが、テレサのもとを離れてベルベットたちと行動するうち、しだいに自分の意思で生きかたを選ぶことを覚えていく。(中略)実はベルベットの姉セリカのお腹の子が、カノヌシの心として復活した聖隷であり、カノヌシの本体が封印された際には、四聖主の均衡を保つ役目をになうことを決意。

あー、なるほどなー、となんか腑に落ちました。

私はこれまで、地脈でのフィーとエレノアの以下の会話を根拠に、カノヌシにはラフィの<心>もあったのだと解釈していました。

フィー「カノヌシの力がどんなものかわからないけど、僕はきっと本物の弟だったと思う。メルキオルの幻覚にも耐えたベルベットがあんな風になっちゃったんだから」
エレノア「弟の身体を依り代にして、カノヌシが復活したという可能性があるのでは?」
フィー「わからない。けど、それならベルベットはあんなに苦しまないんじゃないかな?」

でも、用語集によるとそうではないようです。流れを追うと次のようになります。

・カノヌシは心と本体の2つに分けて封印されていた。
・本来は、ふたりの生贄により心と本体が同時に復活するのだが、セリカのお腹の子ひとりが生贄となったイレギュラーにより、先に心だけが復活。
・このとき復活したカノヌシの心は聖隷ライフィセットとなった
・その後、降臨の日にラフィを生贄にしてカノヌシの本体が復活。
・ゲームでのカノヌシは、ラフィの記憶をもちながら心をもたない存在だった。 

おお、なんか整理されてきた。

つまり、ラフィの心はもうどこにもなくて、記憶だけの存在になってしまったということです。
死んだのだから当然なのですが、あのカノヌシは、ラフィが喋っている姿ではなく、ラフィの記憶が喋っているだけという感じでしょうか。痛いのも怖いのも我慢したんだ、と泣き喚いたのは、ラフィの記憶がそう言わせていただけなんだ。

カノヌシの心とからだの問題を考えるときに、私はいつもテイルズオブジアビスのエンディングのことを思い出すのだけど、
(※すみません以下アビスの重大なネタバレです。

 

エンディングで帰ってきたのは、ルークの記憶をもった<アッシュ>であって、<ルーク>はもうどこにもいなくなってしまったんですよね。
大爆発現象によって、レプリカは死亡したオリジナルの音素を取り込む。しかし後にレプリカ自身の音素はオリジナルの音素によって弾き出され、その存在にとって代わられる。よってレプリカは死亡し、オリジナルが蘇生される。ルークの存在は記憶だけになってしまったのです。
終盤のサブイベントで、ジェイドとディストが大爆発現象について語る場面がありました。
ディスト「……記憶は残るのですよ」
ジェイド「いえ、記憶しか残らないんですよ」
という台詞を、10年経っても鮮明に覚えています。
カノヌシの状態は、アビスのエンディングとよく似ていると思います。

 

「記憶しかない」ということは、その人の心はもうない、死んだ、ということです。

では、エンディングでベルベットが抱いて眠ったのは一体誰だったのか?という疑問があります。
理屈からすれば、あれは<ラフィの記憶>でした。エンディングで見た冒険の夢は、二人が見た夢なんだと思っていたけど、ラフィの心はもう無いから、ベルベットだけが見た夢だったということになってしまいます。でもそれは少し悲しすぎる。

個人的な願いですが、最後にベルベットと一緒に眠ったのは、どうか<ラフィ>であって欲しい。そうでなければ、あまりにも救われない。
最後のカノヌシはただの記憶ではなくちゃんと心のあるラフィだった、といえるかもしれない根拠として、ラストバトルで、ベルベットの櫛を砕いたカノヌシが驚く描写があります。

「あれ、お姉ちゃん、なんで僕の櫛を……」
「それは、”ラフィ”がくれた櫛よ。聖主カノヌシ」
「そっか……僕は”カノヌシ”で、あなたは”災禍の顕主”だったね」

カノヌシは、自分をラフィだと混同・誤認・勘違い・取り違えています。
ラフィの記憶にカノヌシの人格が傾いたせいなのか、ラフィの心が蘇ってきたのか、わかりませんが、細かい部分はもう理屈じゃねえんだということで済ませたいので、ここまでにしておきます。

なお、設定画を見ると、エンディングでラフィと冒険するベルベットの髪の長さは「村娘のものと同程度の長さ」と指定があります。
あの夢は、悲しい旅を終えたその続きじゃなくて、あたたかい日々の中での出来事なんだな、と感じました。

◇ 

さて、ではカノヌシ自身の人格・記憶・姿はどこへいったのか?という疑問にもとりあえずの意見を出しておきたいと思います。

公式コンプリートガイドの用語集によりますと

カノヌシ【聖隷名】
無を司る第五の聖主で、あらゆるもの喰らって鎮める力をもつ。(中略)人が生む穢れが限界を超えると人の意識ごと世界をリセットし、穢れをなくしたのち眠りにつくということを繰り返してきた。

四聖主【用語】
四聖主の力の源は純粋な人間たちの祈りだが、人々が穢れ、祈りを忘れたせいで眠りについている。聖主カノヌシの鎮静化で人に清らかさが戻ると復活するとされる。

とあります。

この世界は、人が祈りを忘れる→四聖主が眠る→人の穢れがさらに活性化→穢れが限界になる→カノヌシによる鎮静化→人の意識ごと穢れを消し去る→四聖主が目覚める→また人が祈りを忘れ穢れ始める、というサイクルを繰り返している。
だから、カノヌシとは穢れを浄化するシステムとして機能する以外には意思をもたない存在なのではないか、と思いました。

その機能さえ果たせれば、姿も人格も問わない、みたいな。そもそも穢れとは心や感情からくるものですから、カノヌシ自身が心を持っていたとしたら、かなり不安定な存在になってしまいます。(聖隷自身が穢れを生むことはありませんが)
カノヌシの心には、システムとして何をするべきかが記録してあるだけなのかもしれません。喰魔をつくりだす、穢れを祓う、といった世界を浄化するために必要なことだけを本能的に遂行できるようプログラムされている、みたいな。
わざわざ二つに分けて封印しているのも、奇妙ですよね。心が自我をもつことがないようにするためだろうか? 

なお、「カノヌシ」の本来の名前も明かされていません。各資料によると、

カノヌシとは本来の名前ではない。本来の名前を口に出すことが禁忌だったため「彼之主」と称されていたことに由来する呼び名である。(テイルズオブベルセリア公式コンプリートガイド)

カノヌシは名前ではなく「彼の主」、すなわち「名も無き天族」「真名を呼んではいけない天族」という説がある。(テイルズオブゼスティリア公式設定資料集)

となっています。

本来の名前ってなんなんですかね。もしかしてもともと名前がなかったのかもしれないですね。
カノヌシはシステムに過ぎないから、名前を与えるに足る人格みたいなのはない、それで指示語がそのまま名前になったとも考えられるかなと思いました。 

「天への階梯」をクリアすると、世界の仕組みを識る者と話ができます。
そこでは「聖隷とは数万年前に人間との共存を望んで天界から地上に降りた天族を指す。聖隷のうち主神として彼らを率いた存在が聖主と呼ばれる。人間と天族の共存が果たされたときに、天界へ続く門を開くが、その誓約の対価として、人間の業魔化と聖隷のドラゴン化が発生するようになった」ということがわかります。
聖隷は世界の仕組み、すなわち業魔病の正体が「穢れ」であることについて人間に語ることを禁忌としていますが、同じようにカノヌシについても語ることを禁忌とされているから、やはり天界や世界の仕組みに関係のあることなのでしょう。
ただ、天界の住人の理屈からすると、カノヌシももとはいち天族なんですよね。でも他の四聖主とは毛色が違うし、このカノヌシっていうやつはそもそもどんなやつなんだろう?っていうのが今後ちらっとでもわかれば楽しいかなあ。

カノヌシのかぞえ唄の二番がずっとよくわからなかったのですが、心と本体がそれぞれ封印されていることからなんとなく理解できそうです。

八つの穢れ溢るる時に 嘆きの果てに彼之主は
無間の民のいきどまり いつぞの姿に還らしめん
四つの聖主の怒れる剣が 御食し(みおし)の業を切り裂いて
二つにわかれ眠れる大地 緋色の月夜は魔を照らす
忌み名の聖主心はひとつ 忌み名の聖主体はひとつ

八つの穢れを喰って覚醒したカノヌシは、人が生む穢れが限界を超えると、人の意識ごと世界を無垢な状態にリセットする。穢れがなくなり、人が清らかな状態になると四聖主の加護が戻る。役目を終えたカノヌシは心と体の二つに分かれて大地を器とし、眠る。という感じでしょうか。

個人的には、「四聖主の剣がカノヌシを封じる」というのはこのサイクルを観察した人間によるイメージで、システムとしてのカノヌシは四聖主が目覚めると勝手に眠るものだと思っています。

 ◇

話は変わりますが、TOZでは天族(ミクリオ、ライラ、エドナ、デゼル、ザビーダetc.)が全員左利きでしたが、TOBの聖隷もフィー、アイゼン、カノヌシが左利きとされていました。
TOB公式コンプリートガイドにも明確な記載はなかったけど、天族・聖隷=左利きで確定なんだろうか?
ちなみに神依すると人間が右利きでも左利きになります(スレイ、たぶん未完成神依オスカーも)。
半神依のメルキオルは右利きのままかな……?
アルトリウスは、もともと右利きで、怪我してから左手で剣を持っていて、神依すると右手に持つようになります。