二月の星のうえ

テイルズが好きです。ほぼネタバレに配慮していない個人的な感想です。

【ベルセリア】公式設定資料集オリジナル小説について/その2

テイルズ オブ ベルセリア 公式設定資料集(12/17発売)のオリジナル小説『真名~true name』についての感想です。
第1章、第2章の記事はこちら。 

ネタバレだらけなので、続きからお願いします。
そしてできれば、買ってから読むか、読んでから買ってください。

 

第3章 かわいいぼうし

このお話では、マギラニカが生まれてからのこと/見世物小屋でのこと/ビエンフーとの出会い/メルキオルとの修行/最後の試練/グリモワールのもとでのこと/マギルゥになるまでのこと、が描かれています。
本当にいい話だったので、これが読めただけでもお金払った価値があったなあ、と思ってます。

今をさかのぼること二十と幾年。(中略)マギルゥが、まだマギラニカと呼ばれていた頃のものがたり。

やっぱりマギルゥの年齢は二十代後半くらいかな。アラサーかわいいよ……!! 

この世に生を受け、初めて目を開いたその朝から、マギラニカの世界には聖隷や業魔が見えていた。同じ日に生まれた近所の赤子が初めて立ち上がった昼下がり、マギラニカはひとりで屋根の上にのぼり、大人でも難しい本を読んでいたという。

公式設定資料集の39ページで、人間の霊応力についての解説があります。
霊応力は基本的に先天的な能力で、力の強弱を問わず霊能力をもっている人間は世界に1%ほど。さらに、つねに聖隷を知覚できる人間はほんの一握りといわれており、アルトリウスやマギルゥがこれにあたりますが、そのような人間は他の人間と比べて精神的・肉体的成長も速いということなんでしょうか。アルトリウスも10代のうちからクローディンに代わって活動していたし。
ラフィとかリーブが賢いことも、無関係ではないんだろうな。そうすると、スレイやロゼ?もこのような天才的な才能を持っていたのかもしれません。

 

しかし迷信深い両親は我が子を魔女と恐れ、忌み嫌い、ある日彼女を捨てた。《居場所なしのマギラニカ》を拾ったのは興行師で、彼女は見世物小屋の名物となった。劣悪な環境のなかで働かされる彼女は、客席の子どもたちがうらやましかった。ぬいぐるみを買ってもらった子や友達どうしの会話――。
仕事を終え疲れ果て、ひとりぼっちの彼女は納屋の片隅の寝床に横たわる。そんなある日、まどろみ始めた彼女の耳元に、奇妙な話し方をする聖隷が現れる。

「いいなぁ。私もぬいぐるみ、ほしい……友だち、ほしい……な」
かなわぬ夢と知りながら、窓からのぞくまんまるの月に願った夜のことだった。
「……涙の痕が、まだ乾いていないでフ……かわいそうに。キミも、孤独(ひとり)なんでフね……」
(中略)
「あなたも、捨てられたのね……」
孤独な少女は思った。月が願いをきいてくれた。もう、私は一人じゃない。
「かわいいぼうし……」
マギラニカは抱きしめ、再び眠りについた。その言葉にぬいぐるみが嬉し涙を流したことも、その言葉で二人が無意識のうちに契りを交わしたことも、知る由もなく。

あ~~~~~~最高……
二人の出会いがとってもとっても素敵で本当に嬉しかったです。
ぬいぐるみ、友だち、そんなありふれた小さなあたたかさが遠くて羨ましくて仕方なかったマギラニカは、ある月の夜に、まどろみの中で《ぬいぐるみ》に出会い、心を通わせ、友だちになっていた。そこに特別な演出や多くの言葉はありませんでした。(ビエンフーが明け方まで初恋のノルミンにふられた話をしていたけど)ひとりぼっちの二人が出会ったことだけでもう十分だった。
この瞬間、それだけでお互いに救われたんだ、と思ったらもうこの時点で視界が滲みました……。 

その後、ある事故をきっかけに、マギラニカは特等対魔士メルキオルの養女に迎え入れられた。マギラニカ・ルゥ・メーヴィン。《居場所なしのマギラニカ》が初めて手に入れた《姓》と《お師さん》。次代の導師の影となるべく、マギラニカとビエンフーはつらい修行をこなしていった。どれほど過酷でも、誰かに必要とされている喜びが、《居場所》を得た喜びが彼らを奮い立たせた。

 うんうん。わかる×100

メルキオルの掲げる理想に強く共感し、マギラニカはのめり込んだ。
「マギラニカ……自分の成長を止めることを誓約にして霊応力を高めるなんて、禁忌に触れかねないでフ。危険すぎまフよ」
「うるさいぞ、ビエンフー! 人間の身体能力は十代でピークを迎えるのじゃ。最高の土台を保ったまま、術の強度を増すことができるならば、それは《理》に他ならん」
「でも、対魔士である前に、マギラニカは女の子なんでフよ。言葉遣いも近頃おかしくなってまフし、人間としての幸せを考えないと――」
「儂は一日でも早く《お師さん》を超えたいんじゃよ。この世界という《全》のために生きることが、儂という《個》の幸せ――そのために、儂が禁忌を犯すことすら《理》になろうというもの! お主はただ、儂のために力を貸せばよい。それが《凡隷》たるお主の果たすべき《理》じゃろうて!」
「……マギラニカ……わかったでフ……」
《理》は、『初めての友だち』を『道具』に変えた。それでも、ビエンフーはがんばれた。《かわいいぼうし》というあの日の言葉が、自分を支えていたから。

この文からはいろいろなことがわかります。
まずは、ビエンフーはこの頃は「マギラニカ」と呼んで、けっこうあれこれ意見していたこと。(現在のような恐怖政治的な(あえてだけど)主従関係ではない。)

それは、二人が『初めての友だち』という代えがたく対等な間柄だったからでしょう。
しかし《理》のために、とのめり込むマギラニカは、自分のことも、自分の大切なビエンフーのことも、二の次にするようになってしまう。しかしこの頃彼女にとって一番大事だったのは、《理》でもなく、ただただ《お師さん》のことだったのだと思います。初めて自分の能力を認めてくれて、必要としてくれた人。その人を超えたいという《個》としての健全な願いを、《理》にすり替えながら。 

「成長を止めることを誓約にして霊応力を高める」ことを検討していたのも、驚きました。検討している、というだけで、それが実行されたのかどうかは明らかになっていませんが、あの年齢不詳な見た目はやはり誓約からきているのか……?

しかし誓約は原則として解除できません。メーヴィンとして長寿を得るためにはさらに誓約をかけねばならないので、二重誓約のような状態になり、かなりの負担になると思うのですがどうなんだろうか。

そして、マギルゥの喋り方はこの頃からおかしくなっていますが、それは明らかにメルキオルを模倣しているからなんでしょう。
マギルゥがのめり込んだのは、お師さんの理想で、お師さんの理で、お師さん自身にでもあったということかな。

マギラニカに最後の試練が課せられた。
かの地へ赴き、過去に別れを告げること。無事に帰ってきたとき、彼女は晴れて《導師の影》として認められるのだ。

彼女が向かったのは、捨てられて以来、一度も戻っていない、生まれ故郷の村だった。
十数年ぶりに再会した両親は、涙を流して喜び、笑顔を咲かせた。渡せなかったたくさんのプレゼント、テーブルに乗りきらないほどの料理――ありふれたしあわせな光景。
しかし、それがありえないことをマギラニカは知っていた。この村はドラゴンに襲われて壊滅していた。両親も死んでいた。これがメルキオルの幻術だとはじめからわかっていた。けれど……。

さて。「最後の試練」についてはいろいろな憶測がとびかっていましたが、何があっても《理》を優先する人間となるために「感情を消す」「メルキオルを殺す」など、方向性としては、マギルゥがどーしても実行できないことを課すものだと考えられていたと思います。

でもこのお話のなかで語られる試練は、別のベクトルを向いていた。これほんとーにうまいなあ……と感心してしまいました。

口ではいくらでも「儂に親などおらん」と言えても、彼女にとっての原初の愛とは、どこにでもあるようなありふれた家族の姿だった。その光景から、逃れることがついにはできなかったのです。

「人は苦痛には耐えられるが、幸福には逆らえん」

ベルベットへ向けた彼女のこの言葉が、自分の体験をふまえての真理だった。アバルでベルベットにかけられた幻術とまったく同じものを、マギルゥも経験していたんですね。あのとき、私たちが想像している以上に、マギルゥの壊れた心もぐちゃぐちゃになっていたと思います。だから、自分には出来なかったこと(幻術を破った)をやったベルベットに対して、「むかつくやつじゃて」と感じ始めたのは、必然だったんだ。

しかし、ゲームではメルキオルが「あの時はお前の心が割れた時点で術をとめた。師弟の情けでな。だが、今度は容赦せん。心が砂と化すまで完全に磨り潰す」と言っていて、なんか「物理……!」って印象を抱いたのもあって、最後の試練はもっとハードなものだと思っていました。
それもミスリードで、やっぱり「幸福には逆らえん」という一言が効いてくるんですけどね。

 

最後の試練に失敗したマギラニカは、メルキオルに捨てられた。
少女の心はあっさりと壊れた。残っていたのは《かわいいぼうし》だけ。ビエンフーは彼女を連れて、旧知の凡隷グリモワールのもとを訪れる。

空っぽになったマギラニカは、生きる気力もなく、日々衰弱していった。ある日、ビエンフーは「今日は記念日だから」と料理をつくるため、食材を求めて森へでかけた。しかし、日付が変わる頃になっても、ビエンフーは戻らなかった。「ま、あんたには、どーでもいい、ことなんでしょうけどね」と言うグリモワールには黙ったまま、マギルゥはそっと家を出た。

ビエンフーは、森の中で業魔に襲われていた巫女を助け、ボロボロになっていた。そこへ月明かりに照らされた魔女が唐突に現れた。業魔は狙いをその少女に向ける。ビエンフーは力を振り絞って、彼女の方へ向かった。

ここでグリモワールが登場します。これはゲームどおりですね。
ところで、メルキオルに捨てられたことを聞いたグリモ姐さんはこんなことを言っています。 

「――ふぅん、相変わらず別れ方の下手な男ね。あたしのときもそうだったけど、未練があるフリくらいするのが、女への礼儀ってものよね」

 グリモワールは、先代筆頭のクローディンとメルキオルと関係があったことがゲーム中でも語られていますが、どうもメルキオルと過去に契約していたらしい?ことが仄めかされています。しかも、この言い方だと、ばっさり切られたんだろうか笑

捨てられて、未来も希望もなくなったマギルゥの傍にいたのはビエンフーだけ。
でも、マギルゥは「ボクは、マギラニカに生きててほしいんでフ!」という友だちの言葉にも耳を貸さず、食事もとらずにただ立ち尽くし、衰弱していきました。

そんな彼女が動き出したのは、他でもない、ビエンフーのためでした。

目の前に業魔が迫ったとき、マギルゥはいろいろなことを「どうでもいいわい」と思っていました。
業魔など。マギラニカなど。お師さんなど。

――じゃが、ビエンフー(こやつ)だけは。

と強く思って聖隷術を発し、業魔を消し去ったマギルゥは、(勝手に転んで)気を失ったビエンフーをぎゅっと抱きしめます。「相変わらず、《かわいいぼうし》じゃ……」と呟きながら。

ずっと一緒にいてくれたのは、彼女がひとりぼっちでなくなったのは、ビエンフーがいてくれたから。彼だけが、どんなになっても自分を捨てずにいてくれた。マギルゥにとっても、ビエンフーはたった一人のどーでもよくない存在だったのです。感涙。

その日を境に、マギラニカは元気を取り戻していった。そして、聖隷術の研鑽と、旅芸人としての特訓を終え、旅立ちを迎える。
「儂はもう、マギラニカではない。」そう言った彼女は、自らをマギルゥ姐さんと呼ぶように言いつける。 

ゲーム本編では、グリモワールは「あたしの元で、しばらく過ごした後、ある日突然姿を消した……」と言っています。でもこのお話では、きちんと修行を終えて、きちんと挨拶をして、出て行ったようなのです。

「いざ参らん、ビエンフー! というわけでグリモ姐さん。別れのハグじゃ」
グリモワールに抱きつこうと両手を広げたところで、マギルゥはピタと動きを止める。
「いや、そうゆーのは、やっておらんかったのー」
「いいわよ……今日は特別――」
グリモワールは愛弟子の手を引き、抱きしめる。
「ありがとう、グリモ姐さん」
「さよなら、マギラニカ……いってらっしゃい、マギルゥ」

これを読んだとき、マギルゥがちゃんと感謝できる子だとわかってすごく安心しました。グリモ姐さんにもお世話になったのにいつのまにかいなくなってたなんて、ちょっとひどいなあと思ってたんですが、わざとベルベットたちには嘘をついたのかな。

これを経てからゲーム本編に入ったんだとしたら、もうちょっと素直なところがあったはずだと思いますがw
でも、マギルゥはずっと自分の「素顔」を頑なに隠したがっていたんですね。ビエンフーの真名を「ブタザル」だと言い張るのも、簡単にいえば照れ隠しで。
だからグリモワールは、《どーでもよくないこと》を知られたくないマギルゥが、それを隠して振る舞えるようにとビエンフーに《アドヴァイス》します。グリモのノルミンとしての名ハッピーアドヴァイス は、ここからきていました。

注目すべき点としては、この時期にマギラニカからマギルゥに名前を変えていること。そしてゲーム終盤で「マギルゥ・メーヴィン」と名乗ったこと。
彼女という人間が生まれ変わるポイントには必ず「名前を変える」という出来事がある。
アーサー/アルトリウスの問題と同じく、ベルセリアは本当に「名前」を大切にしています。だから、名前に関わる記述やセリフがあったら、ここテストに出るぞ~~って感じで私たちも注意して読み解かないといけないですね。

マギルゥとビエンフー、二人の間には、他人には非常にわかりにくい絆がある。でもそれでいいんです。二人だけがわかっていればいい。
だから、マギルゥが最初に心を通わせたのも、最後に一緒に歩むことを選んだのも、ビエンフー。いい話だな~。 

さて、その後「マギルゥのもとをビエンフーが逃げ出したのはなぜか?」っていう最大の疑問についてはまだよくわかりません。聖隷使いの荒さに耐えかねて、というのが表向きですが、メルキオルの術の影響もあったと考えられるし、でもどのくらい作用していたのかは不明です。

ただ、ビエンフーは本気でマギルゥが嫌になって逃げたのでは決してない、と断言できるとこのお話を読んで思いました。

たぶん、軽い家出みたいな気持ちだったのではないでしょうか。だって二人は初めての友だちで、対等な魔女とその聖隷なのだから。 

マギルゥは与えられる愛に本当に敏感で。それゆえに臆病でなかなか心を開けず、「儂はどーでもいいが」と前置きするのも傷付きやすい自分を守るため。

けれど本当は普通の女の子なのだ。きっとどこにでもいる、可愛いぬいぐるみが好きで、敬愛する人の口調をまねてみたり、そんな自分の素顔を隠していたりする。

ロクロウに「案外かわいいところがあるな」と言われてあたふたしてたのも、これと同じですよね。
クールぶってるけど可愛い生き物が大好きな、TOAのティアと同じような女の子らしさがあるなと思いました。

 

マギルゥちゃん本当にかわいくて読んでてつらかったし、嬉しかったし、一緒に喜んで泣きました。最高におすすめの小説です。ぜひぜひお買い求めください。 

第4章からはまた次回。

テイルズ オブ ベルセリア 公式設定資料集 (BANDAI NAMCO Entertainment Books 56)

テイルズ オブ ベルセリア 公式設定資料集 (BANDAI NAMCO Entertainment Books 56)