二月の星のうえ

テイルズが好きです。ほぼネタバレに配慮していない個人的な感想です。

【TOtR】レイズ3部12章考察。とある世界線のプロポーズ

テイルズオブザレイズ 3部第12章『錯綜する思惑』が配信されましたので感想です。
イクミリ結婚おめでとう!でもテイルズオブザレイズは地獄なので、素直に祝福できるようなシナリオではなかった……

なぜ二人目のイクスはあの日プロポーズしなかったのか

ゲーム冒頭のあの日、なぜ一人目とは違ってイクスはミリーナにプロポーズしなかったのか、について考えてみました。

今のイクスは、フィルの記憶を経由して具現化されており、一部の記憶を書き換えられています。しかしフィルはプロポーズの件についてはまったく知らなかったので、プロポーズしないようフィルが意図してイクスの記憶を操作したわけではないようです。
また、イクスは臆病な性格に変えられたためにミリーナに告白できなかった、というわけでもなく、イクス本人いわくそもそも「プロポーズする気配なんてなかった」。

(フィルは「イクスはミリーナのことが好き」だと気付いてなかったような感じなので、そのためフィルの記憶経由で具現化されたイクスはミリーナへの気持ちが薄まってしまっているのかもしれないけど、イクスについてフィルの知らないことなんて山ほどあるだろうし、特定の記憶を意図的に改竄しようとしない限り対象の魂をそのまま映して具現化するようなもんだと思うんだけどどうなんだろう。だからむしろフィルが気付いてなかったおかげで手を加えられることなく一人目イクスのミリーナへの想いはそのまま具現化されてそうな気がするが)

というわけでフィルは、プロポーズうんぬんの件については本当にノータッチだと思います。(蚊帳の外だしな……)

一人目イクスは「鏡士になれたら結婚して欲しい」とミリーナにプロポーズして、祖父を説得して鏡士になることを誓いました。
(ちなみに鏡士の才能は血統に依存するので、正式な鏡士同士でないと結婚が許されてなかったのではと思う)
つまり、イクスはミリーナと結婚するために鏡士になった、そうでなければ鏡士にはならなかった、ということです。
プロポーズしたかしなかったかによって、イクスの将来が分岐するのです。

想像ですが、イクスは、鏡士になっちゃいけなかったのではないでしょうか。
鏡士になることをイクスの祖父が反対していましたが、それはイクスの両親が魔鏡研究で亡くなったせいなどではなく、2部でナーザが「イクスこそ最終的な世界の破滅をもたらす鏡士」とイクスに限定して言っていたように、「イクスが鏡士になること」が世界破滅のトリガーになるのではないでしょうか??

イクスが死んだのは22歳のときなんだからその直前から具現化してもいいはずなのに、わざわざ17歳の、プロポーズする前の時間から具現化したのは、「プロポーズをなかったことにする必要があったから」だと思います。予言による未来を変えるみたいな。あるいはシュタインズゲートみたいな。世界の滅亡に関わる過去を変え別の世界線に移動するみたいな。

じゃあ誰がイクスのプロポーズをなかったことにしたのかというと、状況的にみると、ゲフィオンくらいしかいないと思います。
まあ「ゲフィオンはイクスの具現化には関与していない」と以前フィルが言っていたんだけど、プロポーズのことを知っているのは一人目イクスとゲフィオンだけだし、イクスの記憶に手を加えられるのもフィルのほかにゲフィオンしかいないのでそう考えました、今のところは。

ゲフィオンはイクスの死後に「イクスは鏡士になってはいけなかった」と知って、二人目イクスがミリーナにプロポーズする出来事を回避しようとしたのではないでしょうか。「ミリーナへのプロポーズ」が彼を鏡士にさせ、世界の破滅を招くことになるのならば。
具現化してイクスを蘇らせてあげたいけれど、そのせいで世界が破滅してしまっては本末転倒なので、どんなに幸せで大切な思い出でも、イクスの生きる世界をこれ以上壊すわけにはいかない、と思いながら、プロポーズをなかったことにするためにイクスからミリーナへの想いもなかったことにしたのでは。

アイギスの破片が降ってオーデンセが壊滅したので結局三人目イクスも鏡士になってしまうけど、恐らくゲフィオンは記憶を切り離しており、イクスが鏡士になってはいけないことを知らなかったため止めなかったのではないでしょうか。

一人目イクスが死ぬ瞬間のミリーナの記憶(ゲフィオンから受け継いだもの)が曖昧になっていたこともこれに関係してるのではと思う。ミリーナの記憶は「ビフレスト兵に追われるミリーナを守ろうとしてイクスが犠牲になった」というものですが、本当はビフレストの目的は「世界を破滅に導くと予言された鏡士イクスの殺害」だったのではないでしょうか。一人前の鏡士でもないイクスが狙われる不自然さを隠すために、記憶を変えたのでは??

なぜフィリップはプロポーズのことを知らなかったのか

いや私10章読んでからフィリップのこと本気で許さないって思ってたんですけどね、なんかもう可哀想になってしまった…………
木の幹に彫られた二人の名前を見たあとのフィルの反応がさぁ……

フィリップ「…………そう、だったんだ。はは……」
マーク「…………」

いや……きちい……

ここのフィルって何重もダメージ受けてるんですよね。
・イクミリが両思いだったこと
・イクミリが結婚の約束までしていたこと
・イクスはミリーナが好きだったということ
・これらについて自分は何ひとつ知らなかったこと

一人目のイクスが殺されたとき、フィルがミリーナに「僕がイクスの代わりに守るから」な~んて何も知らずに言ってたけど、ほんと哀れなピエロやん、二人はもうとっくの昔に永遠を誓いあってたんだから代わりなんてもうぜんぜん遅いし無理、だったんだ、はは……

イクスたちにとってフィルは「大事な幼馴染」であるはずなのに、二人の結婚についてなぜ話していなかったんでしょう。
フィルがイクスを刺して逃げるように島を出ていったあとも、一年に一度くらいは島に戻って二人に会っていたようなので、イクスが17歳でミリーナにプロポーズしてから22歳で死ぬまでに一度もフィルに会っていないとは思えません。
個人的には、イクスは22歳の時点でまだ鏡士として認められておらずミリーナと正式に結婚できていなかったのかな、と思います。
「一人目のイクスに鏡精はいなかった」という事実から、イクスは一人前の鏡士になる前に殺されてしまったんじゃ。(やろうと思えばいつでも鏡精を具現化出来ただろうけど、鏡精具現化は正式な訓練の過程で習得する術っぽいので)
正式に結婚が決まってからフィルに話そうと思っていたけれど、決まる前に死んでしまい、伝えそこなったのかなと思う。

まあイクスの場合はそう考えられるとしても、ゲフィオンの方は、二十年も一緒にいたのに、フィルに何も話していなかったというになります。

フィルは彼の恋心について「僕は……幼い頃からずっとミリーナが――いや、ゲフィオンが好きだった。イクスが気付いていたかはわからないけれどね」と言っていました。
フィルがゲフィオンを好きだということを、イクスたちは気付いていたんでしょうか。気付いていたか気付いていなかったかどうかで、だいぶ印象が変わってしまいます。

ゲフィオンがフィルの気持ちを知っていたうえであえてプロポーズのことを隠していたのなら、フィルを自分の復讐に付き合わせイクスを甦らせるための実験体までさせて、彼の想いを利用し尽くしたかなりひどい女ということになります。
フィルの気持ちに気付いてなかったのだとしても、彼らの関係を「仲の良い幼馴染三人」と認識していたなら当然プロポーズの件について語ったはずだと思います。ゲフィオンにとっては「大事な恋人+年下の近所の男の子」くらいの関係だったのか……

いずれにせよ、ゲフィオンにとってフィルは、イクスとの大事な記憶を語るにふさわしい相手ではなかったということだと思います。イクスの代わりだなんてとんでもない。彼について語る資格すら与えられなかった。「ミリーナはイクスしか見てない」とフィル自身もわかっていたけど、本当にそうだったんだよ、ミリーナはそういう女だってわかってただろ、お前が甘かった。

イクスについては、フィルの気持ちには本当に気付いていないで欲しいと思います。
気付いていたなら、正々堂々と「自分もミリーナが好きだ」「プロポーズしたんだ」と告げてくれたと思う。イクスはフィルも含めて「大事な幼馴染三人」と言っていたし。イクスなら出し抜くようなことはしないと思う。
まあそれも私たちの知っているイクスの性格なら、という感じですが……一人目イクスが表向きだけ好青年で裏ではフィルのこと見下しておりミリーナを手に入れて優越感に浸っているようなクズだったらそれはそれで新たな地獄が広がり面白いんだけどね(面白いか?)

しかし、イクスがいつミリーナのことを真剣に好きになったのかわからないけど、フィルがオーデンセに住んでいた頃からそうだったのなら、とっくの昔にイクミリ二人の世界で完成してたのに、フィルだけがなんにも知らされてないまま小さい恋心と憧れ抱いて相手を殺す寸前まで悩んで嫉妬してたのほんと地獄みたいだな
世界がヤバイって話をしてるのに、話の中心であるべきオーデンセ幼馴染たちは、個人的な動機ばかりで苦悩していて人間味があっていいですね……

深淵を覗き込む

被験者イオンの存在がもうすぐそこに感じられて、怖いくらいだった。
オリジナルイオンの性格や人となりは原作ゲームだけではほとんどわからなくて(「ルークたちと旅したイオンとはまったく違う性格だった」ということくらいしか描写されていない)製作者インタビューやコミカライズ版の外伝を読んでようやくどんな人物(※)だったかみえてくる、謎の多いキャラクターでした。
※他者や自分のレプリカを平気で殺したりする残忍さがある一方で、アリエッタにだけは愛情を向けるというような

それがいよいよ登場しちゃうのか~~~と思うと、確かにレイズは原作と地続きのすばらしいifを見せてくれる世界ではあるけれども、原作ゲームで謎だったところは謎のままにしておいて欲しいというか、いっそ登場しないで存在をほのめかすだけでも十分だと思ったり、いやでもやっぱりラスボス並の存在感で登場してアビス勢を地獄に叩き落としてばちばちにやりあって欲しいな~~などといろいろ思っていたところでございました。

つまるところオリイオ様がどうシナリオに絡んでくるか、とっても期待はしていたんですけど、予想以上で震えました。
オリイオ様は、ハロルドに「イオンの心核とシンクの心核の入れ替え」を要求していました。
ウ、ウワ~~~~~~~~まじで????
「導師イオンの代用品にすらなれずに廃棄されたゴミ」だったシンクが、レイズではオリジナルイオンの文字通り代用品になることを求められて、それだけでなく、もし入れ替わりが完了した場合「存在としてオリジナルになる」のシンクにとって最悪の祝福じゃん。
原作ルークやイオンは「誰かの代わりは嫌だ」と言っていたけど、シンクは誰かの代わりにすらなれてなかったから、代わりの役目を与えられることが彼にとってはひとつの救いになってしまうと思います。もともとシンクはそれが出来なくて、生きる意味を、生まれた意味をなくしたんだから。
オリイオ様の要求を聞いて「自分はこのために生まれてきたんだ」とシンクが一瞬でも「生まれた意味」を感じてしまったらとてもとても皮肉だよね。やっと、望んでいた「代用品」になれる、ということ。喜べ少年、君の願いはようやく叶う。

でも、原作シンクだったらもしかしたら救いに感じてしまったかもしれないけど、レイズの今のシンクだったら、誰かの代わりになるだけじゃもう救いにはならないんだろうなと思う。もう、誰かの代わりではない一人の存在として皆に求められてしまっているから

しかしオリイオ様がシンクとの心核入れ替えを要求する理由がよくわかりません。能力劣化しても健康な身体で生きるのを望む理由ってなんなんだろう?
というか、ティル・ナ・ノーグに来ても「12歳で死ぬ」という預言の効力はまだ生きてるんでしょうか?死の預言がなければオリイオ様がすぐに死ぬようなことはないと思うんだけど。
それとも、預言の回避のためシンクの体を求めているわけじゃなく、別の理由があるのかな~~
導師という役割も自分の死の預言もラストジャッジメントスコアもない(まあスコアとは別の予言で滅亡しそうな世界ではあるけど)この世界で彼はなにがしたいんだろう?彼については預言を憎んで虚無のまま死んでいったことくらいしか知らないのでよくわからない。それ以外にはもう生きる理由なんて「アリエッタ」くらいしかない。
シンクの体と入れ替わろうとしていることをアリエッタには隠しているので、彼女にとっては「優しいイオン様」のままで、これから彼女と一緒に生きようとしてるんでしょうか。
預言のない世界をわざわざ壊そうとするとは考えにくいし、縛られるものがなくなったこの世界ではオリイオ様はアリエッタと静かに生きることを望んで欲しい気はします。
ハロルドを拷問したり(最近のレイズくん全年齢対象のゲームじゃねえよなぁ笑)とアリエッタ以外には手段を選ばないオリイオ様の残忍さも、生来のものじゃなく自分の死の預言を知って歪んだものなんだと思うけど、自分の望みのためには他人が痛くてつらい思いしようが関係ない、という、メルクリアと同じようにやっぱどこか幼いところがあるなと感じました。まだ12歳だもんね

自分のレプリカになんて何の価値も感じていなかっただろうオリイオ様が、火山に棄てられたレプリカたちのうち唯一生き延びていたシンクの健康な身体に目をつけた、という、一部とはいえシンクの方が自分より優れていると認めた状況がとても面白いですね。レプリカはオリジナルより劣化こそすれ、優位性を持つなんて考えもしなかっただろう人が。原作じゃこんなんありえなかったな……

ハロルドを騙すために被験者イオンがレプリカイオンに成りすましていた、という、「レプリカのふりをするオリジナル」の描写があったのも原作にはなかったとこですね。レプリカイオンがオリジナルの代わりをしたり、シンクがレプリカイオンの真似したりしたのとは訳が違うおぞましさがありました。だって本物も偽物も代わりもなにもない、その前に無二のはずの「自分」が死んでなきゃできないでしょそんなこと……

イオンと思しき人物の内蔵と手だけしか残っていなかったということでしたが、さすがにオリジナルイオンもレプリカイオンもここで退場させるとは思えないので、別のイオンレプリカか、別人なんじゃないかと思いますが。でも一人死んでることにはかわりない……なんのためなんだ……
ただ、最初に言ったように、被験者イオンは原作でずっと謎の人物だったので、レイズでも「誰かの口を通して存在だけ語られるものの、最後まで劇中に登場することはない」という構造にするのもおもしろいかなと思います。『ゴドーを待ちながら』みたいな。そっちの方が想像力掻き立てられてオリイオ様の存在感がかえって増し、怖いし。
ん~~~~でもオリイオ様の表情差分見てえ~~~~~~~~欲を言えば操作してえ~~~~~のでたいへんな期待をしながら登場をお待ちしています。

オリイオ様の登場する外伝はこちらです↓