【TOtR】レイズ３部１５章考察。イクス、その存在の輪郭

テイルズオブザレイズ３部第１５章『死と生を告げる音』が配信されましたので感想です。
今回ついに一人目のイクスが登場しました。
すでにファンの間では「1stイクス」呼びが多かったし私もそう呼んでたので、いざ「イクス1st」って呼ぼうとするとどうしても都民ファースト的なものがチラついてしまう……笑

最初のイクス／三人目のイクス

フィルやゲフィオンが好きだったイクスって、めちゃくちゃ"カッコいい人"だったんだな、という印象でした。「フィルは俺のこと好きだからな」と物凄い自信家だったし、「可愛いな」「愛してるからな」なんてキザなことを言うし、これは女からも男からもクソでか感情向けられてしまうだろと思った。
今まで、イクス1stの性格については、

・【フィリップ談】ミリーナに大切にされて、自己流の訓練だけでオーバーレイを成功させて。鏡士としてのとんでもない才能、友達の危機に命がけで駆けつけてくれる勇気、頭がよくて、運動神経もよくて、家族想いで……みんなイクスを慕っていた。慎重ではあったけど、決して臆病でも心配性でもなかった。みんな、イクスがオーデンセを率いていくリーダーになると思っていた。
・【ジュニア談】（メルクリアを見守る）リヒターさんって、昔のイクスに似てるね。イクスの方が穏やかだけど、小さな頃のイクスは今とはちょっと違ってたんだよ。

などと第三者（ほぼフィルだが）から語られていただけでしたが、想像よりも三人目と似ていなくて驚きました。
フィルの「イクスになりたい」という抑圧された願望が恐らく鏡精マークに投影されていることから、イクス1stの性格はマークとよく似ているのではと前から思っていたとおり、三人目イクスよりもむしろマークの方が近いなと思いました。

やっぱこの二人言動近いよなポーズも同じ…鏡精は鏡士の理想や抑圧した感情が干渉して作られる「なりたい姿」だから、刺し殺そうとする程「イクスになりたい」と思ってたフィルの鏡精は当然イクスそのものの投影になるわけだけど、3rdイクスよりもマークの方がよっぽど"イクスに近い"のもう歪みすぎ pic.twitter.com/55fquG9Afp
— 倉田 (@f_eb) 2020年5月30日

しかしこうして一人目と三人目を並べてみると、「イクスを甦らせたい」という当初の願いがいかに変質してしまったかがよくわかるなぁと思う。フィルの罪を隠蔽するのに都合よく記憶と性格をつくりかえた結果、イクス1stの魅力をなくしたイクスが甦ってて。なんのためにイクスを甦らせたんだっけ、イクス1stを失いたくなかったからじゃなかったっけ……
今のイクスも努力家でまじめで人としての魅力は多いけど、フィルたちが会いたかったのはイクス1stにだったんだから、2,3人目イクスは「望まれて生まれた」のとは少し違うのかなと思う。彼はイクス1stの甦りではなく、その代替品でもなく、「都合よく生み出されたスケープゴート」といった感じでしょうか。
そもそも、刺し殺そうとした罪を消したいだけだったら、イクスが死んだままで問題なかったのに、「イクスを甦らせること」と「罪を隠蔽すること」を両立させ天秤にかけた結果、自分可愛さから隠蔽の方に傾いたからこんなおかしなことになってんだよなあ
でも今のイクスは世界や創造主を憎んで終わりとかじゃなく、吹っ切って前を向こうとしてて、ほんといい子だよね（創造主（フィル）に対しては人が変わるほどガチギレしてたけどな！？）

今回イクスがやっと「自分は造られた存在で、どこまでが嘘でどこからが本当の自分かわからない」という葛藤を本当に吹っ切れた感じがあったけど、今まではどれだけ「今何かを大事だと思う感情はイクスだけのものだ」と周りから言われても「でもそれさえも作り物かもしれなくて……」という思考に戻ってきてしまっていました。
そこから一歩踏み出せたのは、1st本人に対面でき、お互いに「君と俺は違う」という認識を得られたのが本当に大きかったのではと思います。というかそうする以外にもう吹っ切る方法はなかったんじゃないかな。いくらミリーナがイクスを心から肯定しながら諭してくれても、コーキスが支えになってくれても、「自分とは何か？」の本当の答えは他人から得ることは出来ないと思います。でもミリーナやコーキスではイクスを救えなかったということではなくて、彼らがイクスをここまで支えてきてくれたからこそ、答えに辿り着けたんだと思います。
イクスと一人目との会話では、「ここが自分と違う」と感じた部分を彼らはいくつも挙げています。

・イクス1st「俺……にしては、控えめでしっかりしてるように見えるけど」
・イクス「す、すごい自己肯定感だな……俺、絶対そんな風には思えないよ」
・イクス1st「えー、すごいな！？　きみ、本当に俺の具現化なのか！？　俺、そんなに努力家じゃないよ。見た目はそっくりだけど、やっぱり違うんだな」
・イクス「（メルクリアへの「可愛い」という発言を受けて）す、すごい……変な言い方だけど、この人は俺じゃないんだな。記憶を弄られなかったとしてもこうなったとは思えない……」

一人目がどんな人かわかって、【自分／一人目】の境界が明確になったからこそ、イクスは「全部とっぱらってここからやり直す」って言えたんだと思う。やっぱり「自分」が分からないまま踏み出すのは怖いから。ようやく自分を構築していく土台を得たという感じがします。

また、今までミリーナもフィルも具現化体それぞれ別の名前があるのにイクスだけは1,2人目とも死んいでることもあって彼固有の名がありませんでした。だから今回一人目に「イクス1st」と名前がついたことも、イクスと一人目の存在の輪郭が明確になったという意味でとても象徴的だったと思います。

ネーヴェ家と魔眼

ネーヴェ家は「バロールの魔眼」が発現する家系であり、イクスがその魔眼を受け継いでいたため、鏡士になるのを禁じられていたことがわかりました。
「バロールの魔眼を受け継いだ鏡士が鏡精を具現化することで、魔眼の能力を得る」という仕組みなので、イクスが生きてるだけだったらとりあえず無害で、「鏡士になる」のも（ビフレストにばれなければ）まあ看過できる。ただし鏡精だけは絶対につくるな、という……
これまで「一人目イクスに鏡精はいなかったから、コーキスの存在こそが今のイクスが唯一無二である証」という文脈でお互いを心の支えにしてたのに、イクスは絶対に鏡精を作ってはいけなかった、世界を滅ぼすかもしれない、そのせいでイクス1stは殺された、コーキスは悪って言ってくるからレイズは地獄。
けど、どうしてビフレストはオーデンセを襲撃したんでしょうね。もともとビフレストは、鏡精は世界滅亡にかかわる禁忌の魔鏡術だから止めるようセールンドに忠告していましたが、それを無視し続けられたからとうとう実力行使に出た、そのタイミングと、イクスが正式に鏡士になったタイミング（22歳で殺されたイクス1stが「俺は鏡士になりたて」だったと言っています）がたまたま近かっただけなのか？　とも思ったけど、わざわざ離魂術を使ってイクスを殺していたことから、イクスがバロールの魔眼をもつ鏡士であることを把握していた可能性があります。（セールンドの鏡士根絶やしにする！っていつもナーザとかが言ってるし、島民すべてをわざわざ離魂術を使って殺しているとは考えにくい。）
でもミリーナの回想では、ミリーナを逃がそうとしたイクスにビフレストの兵士が「どけ！」とか言ってるしむしろイクスの方が邪魔みたいな感じだったんだよね～ただこの記憶はゲフィオンから受け継がれたもので「イクスが死ぬときになぜか光る砂になって消えた記憶」なので、たぶんゲフィオンによって記憶の切り離し等がされている箇所と思われあまり信用できない、というかビフレストがイクスに離魂術使ったのをゲフィオンは見ていたけどその記憶をあえて切り離して改ざんしている？　なんでそんなことしたのかはわからん
とりあえず事実としては「イクスは死体が朽ちないように離魂術で殺された」ので、なんのためなのかは不明ですが、ビフレストはバロールの魔眼をもつ鏡士の死体の回収を目的のひとつとしてオーデンセを襲ったらしいことが推測できます。でもバロールの血を絶やすチャンスだったのになぜわざわざ死体を回収したんだろう。死体になれば魔眼の力は消えるのかな？　魔眼は消えるけど鏡士としての能力は高いから器として他に使い道があるとか？
しかし、世界滅亡させるような能力なんて身内（オーデンセ）にも隠す必要がありそうなのに、なぜビフレストはイクスがそれだと気付くことが出来たんだろうね。内通者でもいたんかね～と思ったあとで、恐らくイクスが鏡士になることを最初に知るのは当然プロポーズを受けていたミリーナ（ゲフィオン）のはずなので実はゲフィオンからビフレストへその情報が漏れたのかも？　などと思いました。イクスは正式に鏡士になる前（フィルがまだオーデンセにいる頃）から隠れて独学で魔鏡術の練習をしていましたが、それを知っているのもゲフィオンとフィルくらいのはずです。
なお、「イクスは将来オーデンセを率いていくリーダーになる」と期待されていたり、島内で迫害されているわけでもなさそうなので、ネーヴェ家が世界滅亡に関わる力を持つ家系であることをオーデンセ島民は知らなかったと思います。鏡士の産地であるオーデンセのリーダーには漁師よりも鏡士の方がふさわしい気がするので、イクスがいずれ鏡士になることを周囲も期待していたのでは？　今は頑固な祖父が反対してるけどそのうちねぇ～みたいな。

また、結局鏡精を生むこと自体にはどんな問題があるのか？　死鏡精化することに問題があるのか？　このへんはまだよくわかりません。

さて、イベントなどで判明しているとおり、今後コーキスが離反する展開になりますが、物理的にイクスのもとを離れた方が安全という理由ではなく、イクスが隠し事をしてることが原因で喧嘩してるみたいな感じで、魔眼を狙われてる雰囲気もなかったし、どうなったんだろうね。
この世界を壊したいらしいデミグラチームは魔眼の力を利用しない手はないと思うのですが。イクスの遺体をレプリカで増やすなどしているのは魔眼の力を使うためなのかなと思うけど。

親から子への願い

今回、イクスの両親の遺言がイクスのもつ魔鏡（両親の形見）に記録されていることがわかりました。
遺言の内容は、たぶん1stイクスが3rdイクスに「全部捨てていいんだ。俺のことも世界だって、ミリーナの愛情だってな。俺もお前も自由だ、忘れるなよ」と言ったのと同様に「自由に生きなさい」っていう感じだったのかな～と思う。バロールの魔眼なんて気にするな、鏡士になるのもお前の自由だ、というような。あと、両親は鏡精システムを嫌ってそれに代わるものを研究していた人たちなので、死鏡精の対処法とかのヒントをくれそうだなと思う。また、生まれたばかりのイクスをおいて王都へ行ってしまった理由が鏡精のためだけとは思えないので、ひょっとしたらバロールの魔眼をどうにかする方法もあわせて研究していたのかも。
そういうわけでイクスの両親は、血の呪いに縛られたイクスを自由にしてくれる方向の遺言を残したんだと思うけど、一方でメルクリアはまだ母親の言葉に縛られています。
メルクリアがビフレストを復活させることを目標にしたのは、母親がそれを見たいと言ったからです。ナーザはそのことを『呪い』と呼んでおり、メルクリアが『呪い』に打ち勝ち、死者の甦りを目指して過去に縛られるのではなく未来に「生きてほしい」と願っています。
鏡精モリアンを殺してしまったことについて、メルクリアは「罰なのかもしれぬ」と言いますが、彼女の母親も「ダーナの天罰じゃ」と言っていたことがあり、言動がよく似ているんですよね。でも、そうやって母親の願いを纏い「復讐」にとりつかれていたメルクリアの幼い心が、周囲の人々と接する中で成長しやっと自分で物事を考えられるようになって、これから前を向いていこうとしているときに、体を奪ったモリアンが「わらわとメルクリア様を絶望に追いやるすべてに"復讐"してやる！」とメルクリアの声で言い放つのも皮肉すぎて……

オーデンセの幼なじみ

「愛してるよ」……か……。1stイクスの最後のセリフがけっこう衝撃的でした。
キザっぽい言い回しをする人らしいのはわかったけど、ゲフィオンとフィルをまとめて「愛してる」と言ったのには、彼らの関係性がよく表れていると思います。
イクスがミリーナのこと愛してても別に今更驚かないんだけど、そこにフィルも入ってきたのが驚いたんだよねわたしゃ。一応断っておきますが、ここで言う「愛している」とは恋愛感情という意味ではなく「自分と同じかそれ以上に大切な人」へ向ける雰囲気の言葉だと私は思っています。
フィルがイクスを刺したとき、イクスはほとんど怒りもせず何も言わなかったけど、それはある意味では彼を自分と対等に扱っていなかったからなのかなと思ってました。年下の子どもで、弟みたいな存在で。だから間違いを犯しても当然、許してあげる、みたいな。でもたぶんそうじゃなかったんだろうな。なんで刺されたのかちゃんとわかってたのかな、それもフィルの愛だったんだって。
一方、フィルはイクスがフィルを愛していたことを知らなかったし理解していなかったと思います。ファントムが「友達思いのイクスくん」とか言ってたの若干フィル本人の本心も混じってたと思うけど、イクスは「友達思い」だからフィルの罪を水に流したと思ってたのかな？　そんな上辺の優しさだけじゃなくて、フィルのことを理解して愛していたから、イクスは何も言わなかったんだと思うけど。それがわからなかったから、手紙読まずに逃げていたんだよね。

ゲフィオンでさえ人体万華鏡になる間際「さようなら、大好きだったイクス」と言うのみで、愛しているとまでは言ってないので、単純に比較すればイクス1stの想いはそれ以上だったということだと思います。だからもしもゲフィオンやフィルが死んだら、イクス1stもまた彼らを取り戻すために死者の具現化に手を出したり世界を滅ぼしたりできたんだろうな。
もしオーデンセ襲撃時に死んだのがミリーナだったら、イクスもフィルもその復讐を動機にしたとしてもゲフィオンがやったのと同じことは出来なかったんじゃないかなと思ってたんだけど、1stなら同じことやったかもねえ。
で、なんとなくフィルにはそれは出来なかったと思うけど、ファントムやジュニアだったら出来そうな感じするの共感してほしい……笑

また、女神ダーナを殺そうとしたバロールなる男がいつの時代の人かよくわからないけど、「巫女ヨーランドと召喚士アイフリードは幼馴染だった」って話が前に出てたの思い出して、もしかしたら彼らもイクミリフィルみたいな"幼なじみ三人組"だったんじゃないのという気がしました……

あと「ジュニアのマーク」とか「イクスからフィルへの手紙」（やっぱイクスから手紙送ってたんだな～よかった）とかいろいろ気になることがまだありすぎてすごいぞテイルズオブザレイズ。

鏡映点の時間の流れが止まっていることについては、すでに３部イクスのスキットでほのめかされていたので、未読の方はぜひ読んでみてください。意味がわかると怖いスキットナンバーワン